『めだかさんたろう』

目黒それでは、『めだかさんたろう』です。2000年8月に講談社から出た絵本です。絵本は『なつのしっぽ』が同じ講談社から出ていて、これが二冊目ですね。『なつのしっぽ』は絵が沢野ひとしだったけど、これは村上康成さん。どうして変えたの?

椎名どうしてかなあ。この村上さんは有名な人で、魚を描くのがうまいんだよ。それで編集者がそういうコンビにしたんじゃないかなあ。沢野は何を書いても同じになっちゃうから(笑)。

目黒魚の種類を描きわけられないか(笑)。

椎名そうそう(笑)。

目黒でも、この『めだかさんたろう』は、元は沢野と組んだんだよね?

椎名紙芝居を作ったんだ。おれが話を書いて、沢野が絵を描いた。それが基になってるね。

目黒めだかさんたろうが海で冒険をするという話で、それはいいんだけど、最後はこれでいいのかなあ。だって、ラストは鯨に食われちゃうんだよ。「けれど、そのからだは、、あまりにもでっかくて、ふるさとのおがわには、どうやっても、かえることができなかった」というんだぜ。全然カタルシスがない(笑)。これ、刊行前に問題にならなかったの?

椎名多少論議はあったような気がする(笑)。

目黒幼児絵本なのに、こんな悲観的な結末でいいのかね。

椎名まあ、純文学だな(笑)。

目黒『なつのしっぽ』のときに聞いたかどうか忘れたんだけど、椎名と絵本のかかわりについて聞いておきたい。

椎名かかわりって?

目黒椎名が幼いときに絵本を読んでたのかとかさ。

椎名ちっちゃいときから絵本には接してたよ。母親が買ってきたやつとか。

目黒あ、そうなの。

椎名おれ、絵がうまいだろ。

目黒うまいというより、味があるっていうのかな(笑)。

椎名ちっちゃいときに、よく張り出されてたよ。

目黒小学校低学年のときに教室に張り出されてってこと?

椎名金賞とか貰ってたぜ。

目黒それは意外だなあ。そのころの絵って残ってないよね。

椎名それはないな。つまり、絵を描くのも、読むのも好きだったんだ。

目黒残っていれば面白かったなあ。

椎名金賞を証明できたのにな(笑)。

目黒そのころに読んだ絵本で覚えているのはない?

椎名ディズニーの絵本で、犬が出てくるやつで、餌を与えられるところで、「ぼくはごはんがだいすきだ。どろさえついていなければ」っていうの、いまでも覚えてる。

目黒よく覚えてるねえ。

椎名3〜4歳のころに読んだ絵本だね。

目黒家にあった絵本だけじゃなくて、小学校に入ると教室の後ろのほうとか図書室とかに絵本があったよね。ああいうのを読んでいたりした?

椎名うん。好きだったよ。

目黒意外だなあ。椎名が幼いころから絵本に接していたとは。外の野原で駆け回っていたと思ってた。

椎名絵本には物語があるからさ、それに惹かれていたんじゃないかなあ。

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