出版社:講談社

発行年月日:2000年08月11日

椎名誠 自著を語る

この本は高校生のときに沢野ひとし君と、ある日曜日、きわめて発作的に一日で作った紙芝居がもとになっている。ぼくが原作を書き、彼がそれに合わせて絵を描いていった。なんのためになぜこんなものを、という理由は一切なしに、作りたいから作ったというだけの紙芝居で、誰にも見せなかったし、見てもくれなかったという悲しいような美しいような一編なのだった。あるとき何かのきっかけでこれを講談社の編集者が眺めて、面白いから本にしましょう、となった。絵はぼくがファンであった村上康成さんが描いてくれることになり、沢野ひとし版も素朴でよかったけれど、やはり学生のお遊び仕事でしかなかったから、彼には悪いけれど村上さんのプロの表現力でもって形になったのだろうと思う。話は決して子供向きには作られていないので、これを読んで小さな子たちがどう感じるか、本が出た後しばらく不安でもあった。

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