『ニッポンありゃまあお祭り紀行』

目黒ええと、『ニッポンありゃまあお祭り紀行』です。雑誌「自遊人」に連載し、2008年カラット社から本になって、文庫は新潮文庫で2冊分。「春夏編」が2011年4月、「秋冬編」が2011年9月と。

椎名そうだな。

目黒この本の冒頭で、ある月刊誌で「まつりはいいなあ」という連載をしていたけれど、8回くらいで終わってしまったと書いている。たしかにあったよねそんな連載。それ、どうしたの? 8回じゃ本にならないか。

椎名何かの本に入っている。

目黒そうか、それで読んだのかオレも。その「まつりはいいなあ」のときは「全国祭り行事一覧」のような本を見て、それで自分で列車や飛行機や船の切符を買って宿も予約してカメラ片手に取材に行ったというんだけど、全部一人でやってたの?

椎名そうだよ。だから面倒になって8回でやめちゃったんじゃないかなあ。

目黒で、この『ニッポンありゃまあお祭り紀行』のときは、インターネットで全国のお祭りを簡単にその内容まで調べることが出来たから便利であったと。取材態勢も、連絡交渉と現場リーダーに西澤亨、取材記録に斎藤海仁、撮影サポートに斎藤浩と、万全の構えであったとあとがきに書いているね。

椎名あと、以前の「まつりはいいなあ」との違いは、今回は「ありゃまあ度」を導入したこと。

目黒それ、もう少し説明しないとわからないよ。ようするに、どこかヘンテコな、どうして?と思うような祭りをターゲットにしたということだ。それをこの本では「ありゃまあ度」と表現し、☆5つの採点つき。ちなみに満点の☆5つを獲得したのは、次の4つ。


佐渡のチンポコまつり
長野木曽のみこしまつり
宮古島の泥まつり
奈良北葛飾郡の砂かけまつり

すごく興味深い内容なんだけど、しかしこれ、特に言うことないんだよね。困ったなあ。そうか。この本は「ありゃまあ度」で採点しているんだけど、そういう基準とは別に、椎名がプライベートでも行きたい祭りってある? どこの何という祭りなのか教えてほしい。

椎名そういうことなら、福井勝山市の勝山左義長だな。

目黒下巻の最終話として収録されているやつだ。ええと、見出しが「いい顔ばかり、喜びのつたわる太鼓と火のまつり」。ありゃまあ度は☆2つだね。なにがよかったの?

椎名おれ、このあと4回も行ってるよ。

目黒本当に気にいったんだ。何がいいの?

椎名街の人がみんな喜んでいるんだ。屋台はいっぱいあるし、踊りは楽しいし、とても気持ちがいい。先月も行ったばかりだよ。

目黒ふーん。

椎名その反対が、おはら風の盆だよ。

目黒おお、有名なやつだ。

椎名みんな、苛立っているんだ。

目黒どういうこと?

椎名ぴりぴりしているんだ。

目黒ちょっとまってね。富山市八尾の「おはら風の盆」についてはこの本の冒頭に書いているね。それを引用しておこう。

現場にいくと世に伝えられているよりももっと凄い観光客の雑踏で、みんな興奮していてなんだか険悪になっている。写真を撮るために移動しようとすると「前に立つな!」などとすぐにヒステリックに怒られるのである。でも夜を徹して観光客が群衆をつくって見ているのはただの「盆踊り」なのである。その踊りはたしかに美しく、哀調をおびた有名な唄や三味線、胡弓をつかったお囃子などじつに味わい深いのだが、なにしろ観光客が多すぎる。

すごいね、怒号が飛んだりするんだ。

椎名観光業者もよくないんだよ。泊まるところもそんなにないのに、どんどん人を押し込むから。なにしろ人口2万人の街に十二万人が殺到するんだからね。どこかおちつけるところに行こうと思っても、そもそもそういう店がない。まつりの三日間だけやっている臨時の居酒屋に入ったら、ビールも肴もすべて紙コップに紙皿、メニューもレトルト食品のようなものばかり。

目黒高橋治の『風の盆恋歌』の舞台になったところだよね。

椎名NHKでやったのが大きかったんじゃないかなあ。

目黒その「おはら風の盆」に比べれば、福井勝山市の勝山左義長は素晴らしいと。

椎名観光客が押し寄せたら困るけどな。

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