『ワニのあくびだなめんなよ』

目黒ええと、『ワニのあくびだなめんなよ』。週刊文春の2004年9月30日号から2005年9月29日号まで連載し、2007年5月に文藝春秋、2010年九月に文春文庫と。赤マント・シリーズです。

椎名話はもうないか。

目黒いや、細かなことがたくさんある。まず映画の話だけど、ここでは「スカイ・キャプテン」が面白そうだけど、「マーズ・アタック」が最高のSF映画だと椎名はよく言うよね。それは今でも変わらないの?

椎名そうだよ。だって監督もいいし、役者もいいし。大人のSF映画だよね。たとえば、火星人は地球の空気と合わないはずなのに、ヘルメットも被らずに歩いてくるシーンがある。それにはちゃんと科学的な理由があるんだ。

目黒じゃあ、おれがいちばん好きな「エイリアン2」はどういう評価?

椎名あれは特撮とかの驚きで見せる映画だろ。SF映画としてはレベルが低いよ。

目黒あっ、そうか。SFとしてどうなのかっていうのが椎名の基準なんだ。おれにとっての「エイリアン2」はアクション映画なんだ。

椎名あのエイリアンはぬるぬるしてるだろ。あんなぬるぬるしたやつらが精密な操縦桿に触ったり、コンピュータに触ったりしてるなんてリアリティがない。

目黒スピルバーグの「宇宙戦争」の話も出てくるけど、椎名はあまり褒めてないよね。

椎名地面の中からすごいものがワーっと出てくるんだ。1000年くらいそこにひそんでいたって言うんだけど、そんなことあり得ないだろ。

目黒椎名は科学的にあり得ないとダメなんだ。

椎名そりゃそうだろ。

目黒じゃあ、おれが見たら気にいるかも。絵としてはすごいんでしょ?

椎名そりゃ驚くさ。そういうふうに作っているんだから。

目黒じゃあDVDを買おう。

椎名レベルが低い君にはぴったりかもな(笑)。

目黒なるほどね。それでは話を変えます。浮き玉野球の話が出てくるんだけど、椎名はまだやってるの?

椎名おれはもうやってない。でもリーグはまだ残ってるよ。むしろ大きくなっている。

目黒話はどんどん飛んでいくんですが、神保町に古本を買いにいく話がここにもあるんですが、よく神保町にいくよね。早稲田には行かないの?

椎名早稲田は車を止めておく場所を探すのが大変なんだ。

目黒あるだろ駐車場くらい。

椎名まあ、どこかにはあるんだろうけど。

目黒いや、椎名の行きつけの古本屋が神保町にあるからって理由かなと思ったんだ。

椎名その理由もあるな。

目黒あと、幽霊話がこわいね。地方の宿に泊まったときに四つんばいの男が現れる話。小さな男が裸で四つんばいになっている。

椎名はっと目が覚めたら足もとにいるんだ。お前は誰だって殴っても手応えがない。それで寝られなくなっちゃった。おれは感度がいいから連れてきちゃったんだろうな。

目黒もうやめようかこの話(笑)。

椎名島のお祭りを取材に行くと、全景を撮るために高台に昇ってそこらから撮るんだけど、島の高台には墓場が多いんだ。そのときも墓場から写真を取って宿に戻ったんけど、そのときに連れてきちゃったんだ。隣の部屋でスタッフが麻雀をしてたから、その部屋にいくと、椎名さんどうしたんですか赤い目をして、と言われてさ。で、やつらと部屋に戻ったら窓が少し開いている。開けた覚えはないんだよ。そこから幽霊が入ってきたのかもってやつらが言うんだけど。

目黒窓開けないと入ってこれない幽霊なの?

椎名知らないよ(笑)。

目黒ええと、けずりぶしと海苔とゴマが、辺境のキャンプにいくときの必需品3点セットという話が出てきて、「カンヅメとビンヅメは絶対にダメ」と椎名が書いているんだけど、これは重いからダメってこと?

椎名それもあるけど、あとは捨ててこれないだろ。

目黒なるほど。

椎名カンヅメとビンヅメを持っていかないのは常識ですよ。

目黒日本人で、辺境のキャンプに行く人が何人いるか知らないけど、そう書いておきましょう(笑)。

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