『モヤシ』

目黒次は『モヤシ』です。北海道新聞に連載して、2003年4月に講談社から本になって、2006年4月に講談社文庫と。これは面白かった。椎名がプリン体で騒いでいたころの話で、ほとんどこれ、実話でしょ?

椎名実話だよ。もやしの栽培キットを持って北海道に行ったんだよ。

目黒具体性に富んでいるのがいいよね。プリン体が心配で、飲み屋でこれ食べようか我慢しようかってだけの話なら、ふーんというだけだけど、ここまでもやしにはまっているとは知らなかった。

椎名トクヤと北海道にいったとき、ホテルの洗面台に栽培キットを置いていたら、あいつ、お湯をかけやがって(笑)。もやしは暗くて湿ったところがいいんだけど、お湯はだめなんだよ(笑)。

目黒わざと?

椎名そんなら絶交だよ。間違えてだよ。

目黒なるほど。水はしょっちゅうあげるの?

椎名霧吹きでしゅっとかける。みるみる伸びるんだぜ。

目黒このもやしの栽培キットはその後も使ってるの?

椎名いや、この北海道旅行から帰ってきてからは使ってない。

目黒栽培キットは使ってないけど、もやしは食べてる?

椎名あんまり食ってないなあ(笑)。

目黒なによそれ。このときだけなの?

椎名ほら、プリン体そのものをあまり気にしなくなったから。

目黒あっ、言ってたねえ。

椎名いっとき夢中になってすぐ熱が覚めちゃうという、いつものパターンだね(笑)。

目黒ふーん。これ、面白かったんだけど、あんまり話がないんだよなあ(笑)。もやしに夢中になっていたころの話でいいんだけど、いちばんおいしいもやし料理は何?

椎名やっぱりもやし炒めかな。お前、大鰐温泉のそばもやしって知ってるか?

目黒なにそれ?

椎名そばみたいに長いんだ。シャキシャキ麺として食べたよ。

目黒ということは、もやしといってもいろいろな種類があるんだ。

椎名そうだな。

目黒椎名は世界中にいってるから聞くんだけど、もやしは世界中で食べられてるの?

椎名アジアだけだな。

目黒えっ、どうしてなのかなあ。生でも食べることが出来て、煮ても焼いても炒めてもいいし、しかも安いのに。

椎名しかも成長が早いからすぐに収穫できる。

目黒でもこの「もやし」は面白かったけど、巻末に収録されている「モズク」は何なのよ。南の島に行ってモズクを食うってだけの話(笑)。これはつまらない。

椎名北海道新聞にかいた「もやし」だけじゃ短くて一冊にならなかった(笑)。で、講談社に言われて、インポケットに書いたんだ。

目黒だったら、「もやし」の後日譚を書けばよかったよ。いまはもう栽培キットを持ち歩かないけど、あのころは楽しかったとかなんとか。

椎名そうだなあ。そっちの線でまとめればよかった。でも、似てるだろ、もやしとモズク。

目黒共通しているのは「も」だけだぜ(笑)。そういえば文庫のあとがきのタイトルが「モヤシ・モズク・ナマコ」というものなんだけど、これは何?

椎名ナマコっていう本もその後書いたんだよ。『モヤシ』の続編だよ。これはいいよ。

目黒順番がきたら読みます。モズクはモヤシを超えられなかったけど、ナマコがもやしを超えることが出来たかどうかは、そのときに判定しましょう(笑)。

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