『春夏秋冬いやはや隊が行く』

目黒次は『春夏秋冬いやはや隊が行く』なんだけど、これは共著だと思う。その前に書誌データを掲げておくと、1999年9月に講談社から刊行されたもので-

椎名週刊現代のグラビアに連載したやつだ。

目黒そうですね。1996年4月6日号から1998年4月25日号まで100回にわたって連載された「椎名誠とあやしい探検隊の海川山酒 焚火塾」を再構成・加筆したもので、本のカバーにも奥付にも、著者は椎名誠となっているけど、内容を読むと明らかに共著だよ。

椎名そうか。

目黒分量という面から見ても、他のメンバーが椎名の本に文章を寄せたというレベルではない。たしかに椎名の文章量がいちばん多いけど、全体の半分以上を椎名が書いているということではないんだよ。それに内容を読めばすぐにわかるんだけど、椎名にもあやしい探検隊にも関係のない話が多い。野田知佑,林政明、岡田昇、中村征夫、太田和彦、川上裕、佐藤秀明、谷浩志、越谷英雄、大蔵喜福といった人達が、滝をよじのぼるとはどういうことかとか、幻のイワナを追う話とか、海中散歩の楽しさとか、それぞれの専門ジャンルのさまざまな話を書いているんだ。時々はそのうちの何人かが集まって、どこかへ行くという話もあるんだけど、そういう文章が全部集まって1冊の本になったという体裁だから、これは明らかに共著だと思う。

椎名そうだよな。

目黒椎名のことだから印税はみんなでわけていると思うけど、そういう本の表記が「著者・椎名誠」となっているのは少し違和感がある。

椎名なるほどな。

目黒それぞれは面白いんだよ。まあ、みなさんプロだから、専門ジャンルの話はやっぱり面白い。椎名が出てこない話はたくさんあるんだけど、たとえば、その中に「治助」(じすけ)という幻のジャガイモをリンさんと佐藤さんが食べる話が個人的には面白かった。これ、美味しそうなんだけど、椎名も食べた?

椎名うん。うまかったよ。

目黒あとは、「最上川発作的筏下り」の回で、小学5年の夏休みに仲間たち4人で筏を作り川を下ったと椎名が書いているんだけど、その筏作りって『アメンボ号の冒険』の基になった話だよね。

椎名そうそう。

目黒この「最上川発作的筏下り」を読むと、筏を作るのはとても大変で、小学生に出来たとは思えないんだけど、少年のころはまあ簡略化して作ったということだろうね。それよりも、この「最上川発作的筏下り」で驚いたのは、最後に筏を解体すること。せっかく大変な思いをして作ったのに、筏下りが終わったら岸にあげて、木を縛ったロープを切って解体するの。なんでこんな面倒くさいことをするの?

椎名そのときは筏作りのプロにゲストとして参加してもらって、その人の指導に基づいてやったからなあ。

目黒ふーん、ま、いいや。あとは「南島熱風三角ベース団」で座間味島で浮き玉野球をするくだりがあるけど、これが「浮き玉野球」の第1回じゃないのかなあ。

椎名そうか。

目黒浮き玉野球という名称はまだ出てこないんだけど、「発砲スチロールのような質感であるけれど、それよりもだいぶ強烈に硬い」と出てくる。拾ったのはトカラ列島の宝島らしいけど、それを座間味島に持っていったんだね。宝島ではやらなかったのかな?

椎名宝島にはそんなスペースがないから。

目黒じゃあ、この座間味島が記念すべき第1回だよ。「素材がしょせんそういうものであるから、思い切り打っても、コキンッといい音がたてるのだが、軟球ほどには飛ばず、日頃運動不足のおじさんたちにはちょうどいい」と。バットは薪のちょうど手頃なのを見つけナイフで削っていい具合にグリップをつけたと書いてあるね。43対37の僅差で椎名チームが逆転負けだって。これが「浮き玉野球」の記念すべき第1回の成績です。

椎名そうか。座間味だったのか。

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