『本人に訊く〈弐〉 おまたせ激突篇』
目黒次は『本人に訊く2』です。ようするに、このインタビューをまとめた本ですね。2017年に4月に、「椎名誠 旅する文学館」から刊行。「1」はすでに集英社文庫に入っていますが、この「2」も文庫化は決定しています。
椎名この「本人に訊く」シリーズは何冊出ているんだ?
目黒出ているのは2冊。ただし、インタビューそのものは、あと2冊分あると思う。
椎名それは本にならないの?
目黒私に聞かれても困るんだけど(笑)。
椎名いや、こないだ、「1」が文庫になったんで読んだんだよ。実に面白かった。
目黒この「2」の中で、椎名が断続的にあちこちに書いている「北政府もの」を1冊にまとめようって、目黒がなんと3度も発言している(笑)。そのたびに椎名が「それでタイトルを『続・武装島田倉庫』にしようって言うんだろ。それ、詐欺商法に近いぜ」って言うんだ。その「北政府もの」がなんと1冊になったんですね。
椎名続・武装島田倉庫、ではない(笑)。
目黒『椎名誠〔北政府〕コレクション』です。いずれこのインタビューにも登場すると思いますが、しつこく言うもんだよなあと思いました。
椎名いや、ありがたいことです。
目黒ただし、許せないこともある。
椎名なんだよ。
目黒『本の雑誌血風録』に出てくるチンチロリンのルールの間違いについては、「血風録」をこのインタビューで取り上げたときに指摘しているんだけど、その後も直っていない。これは抗議します。
椎名なにそれ?
目黒親の総取りは、サイコロが六の目のときなのに、この「血風録」では四の目のときになっている。ルールというのは決め事なんで、みんなの賛同が得られるならどんなルールでもいいんですが、四の目のときに総取りなんて世界中にありえない(笑)。しかも四を六に変えるだけなんだよ。直しは簡単でしょ? 機会があれば、ぜひ直してほしい。
椎名わかりました(笑)。
目黒あとね、『沢野絵の謎』と『沢野字の謎』が文庫化されてなことに、これを読んで初めて気がついた。広く読まれてほしいんで、文庫化してほしいなあ。
椎名タイトルがいけなかったなあ。
目黒そうなんだよ。おれが発行人をやってた間に出た本ではいちばん好きな本だけど、いちばん後悔している本でもあるね。もっといいタイトルにすれば売れたんじゃないかなあって。中身は面白いんだから。ほら、これ見て。沢野の初期の名作。「ストロボがとらえたベンケーシーのじゃんけん」。これ、いま見てもいいよね。
椎名『沢野字の謎』ってのは、どんな内容だっけ?
目黒沢野がイラストの横につけてくる意味不明の言葉を、トーナメント方式で戦わせるという企画ですね。椎名と沢野と木村さんとおれの4人が、勝ち負けを決めていくんですが、この座談会をどこで収録したか、覚えている?
椎名いや。
目黒20周年か25周年の記念イベントを全国4都市をまわってやったことがある。同じようなことを当時は何度もやっているから記憶がごっちゃになってるけど、その楽屋で開演1時間か1時間半前に集合して、収録したの。なんだかあわただしかったけど、あれはあれで、楽しかったなあ。その4回分で単行本を一冊作った。
椎名過ぎてしまえば、すべてがうたかただなあ。
目黒まあまあ。ところでひどいなあと思ったのは、おれも椎名も「血風録」に続編があることを忘れてたんだよ。それが『新宿熱風どかどか団』。忘れるなよ(笑)。あとは『超能力株式会社の未来』。
椎名なに?
目黒それがいまでも面白いって話。
椎名それ、四人座談会だろ。以前、お前がいま読むとつまらないって言ってなかったか?
目黒この座談会シリーズは、最初の3冊はいま読むと意外につまらなくてがっかりしたんだけど、4冊目のこの『超能力株式会社の未来』は面白い。だってね、その会社を作るために、まず超能力者の面接をやろうって言うのよ。鉛の板の向こうに魚とリンゴを置いて、何が見えますかっていうテストをしようっていうくだりが出てくる。すると木村さんがすかさず「鉛が見えます」(笑)
椎名くだらないねえ(笑)。
目黒鉛しか見えないなら不合格(笑)ってことなんだけど、『本人に訊く2』を読んで、笑い転げた記憶が蘇ってきた。
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(この対談は2019年10月21日に行われました)
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