『北への旅 なつかしい風にむかって』

目黒次は、『北への旅 なつかしい風にむかって。これは「大人のための北東北エリアマガジン ラ・クラ」に連載された「北東北 雲ながれ風まかせ旅」をまとめたもので、2010年5月にPHP研究所から単行本になっています。2014年3月にPHP文芸文庫に入るときに、その単行本には収録しなかった連載7本を加え、さらに書き下ろし「いちばん足を運んだ宮古の今を歩く」を足して文庫化している。ええと、まずね、写文集についてはっきりさせておきたい。

椎名どういう意味?

目黒この本のあとがきで、椎名はこう書いているんですよ。

「写真とエッセイの組みあわさった本を作るのが好きになってしまって、これまでも何冊か出していたが、2010年は一気にバクハツしたようにたて続けにそのスタイルの本ばかりを出した」と書いて、次の5冊をあげている。


 『いいかげんな青い空』(朝日新聞出版)
 『世界どこでもずんがずんが旅』(角川書店)
 『波照間の怪しい夜』(雷鳥社)
 『五つの旅の物語』(講談社)
 『海を見にいく』(新潮文庫)

ここに本書『北への旅』を足せば、2010年の年明けから春までに六冊の写文集が出たことになる。この写文集って椎名の独創なの? それとも椎名以前にもあったの?

椎名おれの発明じゃないよ。ただ、こんなに写文集をたくさん刊行している人は珍しいかもしれない。

目黒問題は、その写文集なんだよ。

椎名なんだよ、問題って?

目黒たとえば『五つの旅の物語』は写真がメインで、文章は写真の下か横に数行のみだよね。これをパターン1とすると、パターン2は写真と文章の量が半々のやつ。『波照間の怪しい夜』がこれだよね。パターン3は、量的には文章がメインで、写真はおまけというやつ。本書『北への旅』がこのパターン。つまり写文集といっても、全部同じではないんだ。本の形態としてはだいたいこの3つにわけられる。これ、ずいぶん違うぜ。それを椎名は全部、写文集って言ってるんだ。そうだよね?

椎名そうだなあ。

目黒『五つの旅の物語』は文章がほんの数行しかないから形態としては写真集に近い。で、この『北への旅』は8割が文章だからエッセイに近い。だから、かなり違うんだよ。それを同じ写文集って言っていいものか。

椎名何を言いたいんだよ。

目黒だから読者にはわかりにくいから、今度の本は写文集Aですよとか、写文集Bですよって、パターン別の分け方をしたほうがいいんじゃないかって話。

椎名ふーん。

目黒ま、いいか。ええと、あとは相変わらずラーメンを食べる話が多いんだけど、寄席の末廣亭の近くにある煮干しラーメンの店が閉店してしまったという話が出てくる。これ、山田屋のこと?

椎名違うよ大海ラーメンだよ。

目黒どこにあったの?

椎名だから、末廣亭の並びだよ。いつ行っても座れたんだ。

目黒あったかなあ。

椎名最近の若いやつらは煮干しラーメンを食べないんだな。

目黒あ、そうだ。これが面白かった。ある年の大晦日にワインを飲みながらテレビのナツメロ番組をずっと見ていたって話。

椎名面白いんだよ。

目黒実はこないだ、たまたまテレビをつけたらやってたんだよ。で、ちょっと見たらやめられなくなった。

椎名昔の映像が出ると、その歌手がすっごく変わってたりするんだ。当たり前だよな、それだけ歳を取るんだから。でもその変化が面白い。

目黒そうそう。

椎名おれとおっかあはナツメロ番組のファンでさ、よく見るよ。へーっ、こんなになっちゃったんだって。自分も変わっているんだから人のことを言えないんだけどな。

目黒おれもウィスキーでも飲みながら見たかったけど、その日は本を読まなければならなかったから、テレビを見ている場合じゃないんだよ。でもやめられないの。以前は、ナツメロ番組なんて誰が見るんだよって不思議だったけど、やっとわかったよ。おれ、次に機会があったら絶対仕事を調整してテレビの前に陣取るつもりだもの。

椎名おれなんか録画してたことあったぜ(笑)。

旅する文学館 ホームへ