飲んだビールが50000本! 発売記念トーク第1弾

ニシザワ:11月29日(金)発売!!と、この場で宣言してしまいました。
ホントーに、やりますか? や、やるのですか?

大西:ええ。やりますよ。「とつげき!シーナワールド!!」。突撃です。

ニシザワ:ちょっと昔話からになりますけど、僕が記憶している大西さんの話です。
シーナさんは作家なんだけども映画に思い切りのめり込んで、それが終わったと思ったら、今度は全国の仲間を巻き込んでウ・リーグを立ち上げたりと、必ず作家活動とは別のことでも忙しくしていましたよね。そのたびに大西さんが「うーむ…」という不安な顔を見せていたのをよく覚えているんです。「作家活動に専念して欲しい」という願いが表情に出ていたのかな、と。

大西:そうですね。たしかに、映画に10年間没頭していた時はさすがに冷や冷やしながらみていました。「ホネ・フィルム」という映画会社まで作ってしまうし、動くお金もとても大きかったですし……。でも、シーナ本人は映画に関しては強い思いがあって、やるからには本気で! と思っていたようなので、横から口出しするのは憚られました。
ウ・リーグは、これは純粋な遊びですから、椎名誠事務所としては離れてみていようと思いました。私どもにはまったく関わりのないことでして、と(笑)。

ニシザワ:そして、次なる活動がこの新雑誌創刊ですね。

大西:映画づくりがひと段落して、ウ・リーグも若い人たちに世代交代をして、さて次は何をやり始めるのかしら……とは思っていました。写真の世界に入り込むのかな、とか映画にまた戻るのかな、とか。そうしたところ、どうも“編集者”としての思いが湧き起こったのかしら。思えば、克美荘の時代に「幕張ジャーナル」をつくって、サラリーマン時代には「ストアーズレポート」の編集長をやって、そして「本の雑誌」を目黒考二さんと立ち上げて……ウ・リーグ公式新聞の「ウースポ」にものめり込んでいましたね。シーナは、やはりどこか根っからの編集者、モノをつくることが大好きなんだと思います。
「本の雑誌」は世代交代しましたし、「ウースポ」も若い人に任せて……、気が付けば「おっ?自分がじかに携わってる雑誌が無いではないか」と思ったのかも知れません。その辺は、来週シーナに直接聞いてみてくださいな。

ニシザワ:そうですよね。僕も「ウースポ」を一緒につくったり、あるいはさまざまな場面で一緒にモノをつくっていますが、シーナさんってアイディア満載の一流の編集者とつくづく思います。あと余談ですが、一流のコピーライターでもある。本のネーミングとか絶妙なんだよなあ。「問題温泉」とか「南洋犬座」とか。

大西:「本の雑誌」社が新宿三丁目の事務所にあったころ、私は椎名誠事務所のたったひとりの社員として同じ事務所に同居していた訳ですけど、「本の雑誌」って出版社なのに、最初はファックスひとつ無かったんです。で、シーナはその頃から作家としての活動もはじめたのですがファックスも無いので、大手出版社の編集者さんがシーナの原稿を取りにお越しになるのですね。私のデスクは事務所のなかで一番奥まったところにあったのですが、その手前には「本の雑誌」のひとたちが徹夜作業を終えて、ゴローンゴローンと床に寝ているわけです。マグロのように。そのひとたちをお跨ぎいただいて、お除けいただいて、ようやく私の元にお越しいただくという(笑)。
もう申し訳なくって……。
その時に感じていたのが、シーナをはじめとした「本の雑誌」のひとたちは徹夜して編集作業することそのものが好きなんだなあ、と。時代が変わっても、たぶんシーナは仲間とワイワイガヤガヤと同じような勢いで、編集作業そのものを楽しむ、そんな喜びがいつまでも続いているんだと思います。

ニシザワ:「とつげき!シーナワールド!!」の第一弾ということで何をテーマにしましょうか、となった時にシーナさんとは「まあ、酒だな」「そうですね、酒しかありませんね」「酒だ、酒だ、酒持って来い!」となり、「飲んだビールが5万本!」ということになった訳ですが、シーナさんと言えばやはり酒ですし、編集担当として第一弾としては極めて自然なことかな、と思っているのですが、館長から見て、今後はどんなテーマや、あるいはこんな風になっていって欲しいな、ということがありますか?

大西:「旅する文学館」で、シーナ本人が読んだ面白本を紹介する「鞄のなかの黄金本」というコーナーを立ち上げたのですが、この「とつげき!シーナワールド!!」は、この「鞄のなかの黄金本」に近いものなのかな、と思っています。「鞄のなかの黄金本」はシーナが書いたことを紹介するのではなくて、シーナの興味がある本、主観的に面白いと思っている本を紹介するのですが、「とつげき!シーナワールド!!」も、シーナがいま興味のあることをすごいパワーでもってつくり上げていくという、それは「旅する文学館」の館長として、とても興味深いし、見てみたいことだと思っています。
また、シーナは編集者として、ヒトの才能を発見して、世に出していく……そんな楽しみを知っている人だと思うので、自分だけで突っ走るのではなくて、仲間の才能を引き出していく……ということも楽しみです。最近、若くて才能ありそうな仲間が増えていますし。

ニシザワ:まあ才能があるかどうかはさておき、若い仲間が多いのは事実ですね。さて、「飲んだビールが5万本!」の編集をやりながら、いま感じているんですが、実ははじめる前までは、シーナさんの酒の話の総集編的なものになるのかな、と思っていたんです。アーカイブですね。けれども最初の打合せで、「ニシザワ:よお、どうせやるなら新しく行こうぜ」と。

大西:それで、いきなり酒にまつわる大量のイラストを描き上げてくる(笑)。沢野さんも真っ青になりそうなこだわりのイラストですね。私もシーナがこんなに味のある絵を描くとは知りませんでした。その意味では今後どんな展開になるのか、ひょっとすると全然新しいシーナワールドが見られるのではないか……そんな期待感を持っています。

ニシザワ:今日はありがとうございました。

大西:こちらこそ。ニシザワ:さん、この後はどちらに?

ニシザワ:新宿三丁目でビールを一杯と思っていますが……。

大西:あら?この雑誌、終わるのかしら?ビールは校了してからでいかが?

ニシザワ:……(ココロで号泣)。

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