『沢野絵の謎』

目黒 ええと、次は『沢野絵の謎』です。これは四人座談会の番外編ですね。椎名誠、沢野ひとし、木村晋介、目黒考二の四人が、沢野の絵を一つずつこれはいったい何だと検証していく座談会。1997年12月に本の雑誌社から単行本になっています。これがね、実はいま読むと面白い。

椎名 へー。

目黒 おれ、つまらないと思ってたんだ。

椎名 お前が作った本だろ?

目黒 だから、本の雑誌の経営が苦しくて、資金繰りのためにでっちあげた本だとばかり思ってたの。ところがね、いま読むと面白いんだよ。

椎名 沢野の絵の謎を解いていくのか。

目黒 作者を呼んでね、この絵はどういう意味なのかとか、いったい何を描いたのかとか、問い詰めていくんだよ。作者がわかってないケースでは、沢野が「これ、どういう意味?」って聞くんだよ。すると椎名が「お前が聞くな!」って怒るのがケッサク(笑)。

椎名 思い出した。この食パンはケッサクだな。

沢野さんイラスト1

目黒「正しいものに○をつけなさい」とあって、解答が1.アメリカ人 2.日本人 3.ドイツ人 4.人間 5.ネコ、とある。どうして、アメリカ人、日本人、ドイツ人の次が「人間」なのか。

椎名 普通なら「インド人」とか「フランス人」とかが来るよな。

目黒 初期の絵はすごくいいよね。おれが好きなのは、「ストロボでとらえたベンケーシーのジャンケン」。あのころ沢野は事務所に顔を出すたびに落書きを残して行ったんだけど、その中の1枚。初期の落書きには名作が多いよ。これは推測すると、口と鼻を描けないからマスクをかけて、頭の髪も描くのが面倒だから帽子をかぶらせて、次に手を描いたら失敗したんだな。あれ違うかなこうかなって何度もやっているうちにこうなっちゃった(笑)。

沢野さんイラスト2

椎名 沢野はその推理に対してどう言ってた?

目黒 覚えてないって(笑)。あと、この単行本のときに椎名が好きって言ったやつがこれ。男3人が絡み合ってるの。これも初期の作品だね。これは落書きじゃなくて本の雑誌に載せてやつかな。

椎名 いいなこれ。

目黒 単行本のときにやった座談会でも、「なにを言いたいのかよくわからないけど、おれは好きだな」と椎名は発言している。

沢野さんイラスト3

椎名 しかしバカだよなあ(笑)。

目黒 あとね、「来週はハワイにいくから、おれの締め切りを三日早めてくれって、こいつは自分の都合で言うわけ。彼が苦しんでいるのならおれは許すよ。でも、彼がこんな絵を描いているなら、嫌だなあおれ(笑)」という椎名の発言があるんだけど、小説でもエッセイでも文章にイラストがつくことがあるよね。そういうとき、イラストが優先するってことはあるの?

椎名 おれは聞いたことがない。

目黒 じゃあやっぱり友達だから言ってみたのかな沢野も。

椎名 これは文庫になってないのか?

目黒 なってない。おれもみんなも、たぶんつまんない本だろうって先入観で決めつけすぎちゃったんじゃないかなあ。ぜひ再読してほしい。くだらなくて面白いよ。

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