出版社:文藝春秋

文庫

発行年月日:2013年02月10日

椎名誠 自著を語る

純文学系の雑誌に超個人的な熱い思い込みで連綿と書いてきたSFがこの一冊である。数年前に上梓した『ひとつ目女』のなんとなく気分としては続編にあたるもの。舞台はチベットを含めた南アジアをイメージしている。チベット奥地に象の口川という変わった名前の川が本当にあり、この小説は主にそこを大きな舞台にした。風景そのものが異次元的なところであり、そこをメタモルフォシスした犬があせっていろいろ突っ走る話がかなり多く出てくるのだが、そのあたりの描写は完全に心がその異形の風景、異界に近いような空気感を実感としてさまよっていたように思う。書いていて楽しかったのだが、非常に特殊ジャンルとなるのでどこまで読者にその思いが通じたかはいまだにわからない。

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