回転式離頭銛

ロシア・チュコト半島

ニシザワ「これは何ですか?ホントに分かんないな」

ふふふ。よくぞ聞いてくれた。これはね、鯨とかオットセイ、セイウチなどの漁で使う銛の穂先なんだな。大きさは20cmくらい。銛の先が獲物に食い込むと、回転して抜けなくなる仕組みでね。アラスカもカナダもロシアもみなこのような形の銛を使っているね。大陸を越えた横断的な伝播なんだろうね。
この銛は、ロシア・チュコト半島の先住民、ユピック族のセイウチ漁の棟梁からもらったんだ。
彼らにとって銛は大切なもの。これは俺のタカラモノだよ。

ユピック族というのはアラスカ、ロシアなどの北極圏に暮らすモンゴロイド。
さっき大陸を越えた横断的な伝播って言ったけど、アラスカもカナダもロシアも北極圏はどこも唄や踊り、伝説といった文化はほとんど同じ。顔つき、食べ物、価値観も全部一緒だよね。“北極圏国”とでも言えばいいのかな。

チュコト半島は、ロシア最東端でアメリカともっとも接近しているところだから、冷戦時代には核兵器が林立していて、この半島にあるプロビデニアという町には過去には20,000人の兵士がいたらしい。俺が行ったときはロシア兵が引き揚げたあとで、住居なんかが廃墟になっててね。核戦争は無かったんだけども、まるで核戦争後の町のような荒んだ感じだったね。

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