『おれたちを跨ぐな!わしらは怪しい雑魚釣り隊』

目黒ええと、『おれたちを跨ぐな!』です。2017年8月に小学館から出た本ですね。わしらは怪しい雑魚釣り隊、という副題が付いているように、雑魚釣り隊シリーズの第6弾。参考までにこれまでの5作のタイトルをここに並べておきましょう。


①『わしらは怪しい雑魚釣り隊』(新潮文庫)
②『わしらは怪しい雑魚釣り隊 サバダバサバダバ編』(新潮文庫)
③『わしらは怪しい雑魚釣り隊 マグロなんかが釣れちゃった編』(新潮文庫)
④『おれたちを笑うな! わしらは怪しい雑魚釣り隊』(小学館文庫)
⑤『おれたちを笑え! わしらは怪しい雑魚釣り隊』(小学館文庫)

 最初の3冊と、それ以降の連載雑誌が異なるんだね。

椎名そう。4作目からは連載が週刊ポストになったんで、版元も変更。

目黒まだ連載が続いていたんだ。いやでもいちばんびっくりしたのが、雑魚釣り隊の結成10周年の記念イベントを新宿でやった話。新宿三丁目の幾つかの酒場で、飲み放題で6000円というイベントだけど、なんと230人もきたというから驚くね。これ、準備も大変だったでしょ。

椎名おれはほとんど何もしていないからよくわからない。若い連中が中心になった企画だからね。

目黒このときに作成したパンフレットの写真も載せてほしかった。230人も一般読者がやってきたというから、きっとパンフレットも躍動感にあふれていたと思う。そういう目に見える効果を出してほしかった。本づくりではこれ以外にも注文があって、例によって小さな写真を詰め込みすぎだよね。135ページの宍戸の写真は大きく使っていていいけれど、あと107ページの竹田君の写真は小さいけれど分かりやすくていい。でも、小さい写真をごちゃごちゃ詰め込んだページが結構ある。

椎名そうかあ。

目黒それと、もっと言っていい?

椎名言ってくれよ。

目黒全体としては評価し辛い。それは以前にも言ったけど、参加している人には面白いだろうけど、そしてたぶん椎名も楽しいんだろうけど、それとエッセイとしては、つまり本にまとめて読者に提供することは別の話なんだ。厳しくいえば、これはあったことを書いているだけだよね。これなら別に椎名じゃなくてもいい。著名人なら誰でもいいことになる。

椎名お前なあ、6冊も出ているということはそこそこ売れているからだよ。

目黒売れればいいということなら、このインタビューもいらないよね。おれにインタビューさせて、なんでも言っていいぞ、という機会を与えているのは、それ以外のものも求めているからだろ。

椎名ま、そうだな。

目黒改善の余地がないなら、おれもこんなことは言わないけど、その余地があるんだよ。もう方向ははっきりしている。

椎名どういうこと?

目黒前にさ、雑魚釣り隊の本じゃないけどメンバーがほぼ同じで韓国に行った旅があっただろ。あのときおれが絶賛したと思うけど、そのときのキャラクターがまだ椎名のまわりには揃っているんですよ。どうして彼らの力を借りないの?

椎名もっと具体的に言ってくれよ。

目黒この本の中にも竹田君のレポートが少しだけ入っているけど、彼は文才があるよ。

椎名あいつは書けるな。

目黒竹田君と西澤と海仁、とりあえずこの3人に30枚ずつ原稿を依頼する。そうすると本の3分の1が出来るから、あとの200枚は椎名が書く。これだけで、雑魚釣り隊の旅の報告は、革命的に変わるよ。おれはそう思う。韓国旅の本が斬新で、画期的に面白かったのも、その中心に彼らの原稿があったからだよ。彼らは視点が独自で、感性も文章もいいから、もったいない。もちろん、割合に応じて印税もわけると。

椎名200枚でいいならおれも楽になる(笑)。

目黒その3人以外にも、独自の視点を持つ隊員がいるかもしれないから、そういう隊員レポートを少しずつ増やしていけば、いずれ椎名はいらなくなる(笑)。

 (この対談は2019年10月21日に行われました)

旅する文学館 ホームへ