「三人で夕やけを見にいった」

制作=1976年/16ミリ/5分/カラー

出演=不明

ロケ地=八ヶ岳

あらすじ

感動的名作(?)8ミリ映画『三人で夕やけを見にいった』を16ミリでリメイクしたフィルムだが、低温のためカメラがうまく作動しなかった。

椎名誠 自作を語る

もうこのころは16ミリの操作がだいぶわかってきて、かなり自由自在なことができるようになっていたので、昔8ミリで撮った『三人で夕やけを見にいった』のリメイクに挑戦しました。しかし8ミリで撮れた映画が16ミリでは撮れないという不測の事態に陥ってしまった。  どうしてかというと、雪山のあまりの低温によって、カメラが作動しなくなってしまったんです。たぶんカメラを回すモーターのオイルか何かが凍ってしまったせいだと思うのだけれども、駆動系がいかれてしまい、とうとう撮影は中断となりました。撮ることにばかり気持ちが先走ってしまい、寒さというところまでは頭が回らなかった。結局、未完に終わっています。  実はこの他にももう一本、未完の映画があります。この翌年、粟島に行ったときに撮ったもので、新しいカメラにシネマスコープのレンズをつけて撮影しました。シネマスコープというのは昔の映画にあったような横に広い画面のサイズのことです。ところが当時のぼくは三脚で水平をとるということにあまり神経を使っていなかったので、おそろしく横長のシネスコ画面の中で島から見える水平線があっちこっち傾いていて、とても見られるものにならなかった。  というわけで16ミリ映画の時代には二本の未完成映画があります。今でも悔しい思い出です。 (椎名誠 新潮文庫 1996年『自走式漂流記1944〜1996』より)

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