『下駄でカラコロ朝帰り ナマコのからえばり5』

目黒『下駄でカラコロ朝帰り』は、サンデー毎日で連載している「ナマコのからえばり」の第5弾。サンデー毎日の2010年11月21号〜2011年8月21・28日合併号に連載され、毎日新聞社から2011年9月に単行本。2014年8月に集英社文庫と。著者の言葉を最初に引用しておきます。

週刊誌のエッセイはずっと前から「週刊文春」の赤マント・シリーズを書いており、それはいま22巻までいっている。ぼくの中ではお兄さんとその弟みたいなエッセイ・シリーズだ。面白いもので、20年近く続けているアニキ分のシリーズに対して、こちらのほうは、もう5巻ではあるけれど、まだ5巻目だ、という同じ人間が書いているわりには不思議に客観的な見方もできる。どちらも生活周辺の出来事やその都度の考えをだらだら書いているだけなのだが、不思議と両者の個性のようなものが異なっており、親としてはこの両方の成長ぶり(もしかするとくたびれぶり)なども気になるかわいい奴らなのだ。

これが著者の言葉です。ええと、何からいきましょうか。そうか、これからいこう。不眠症が治った話が出てくるんですが、その話をまとめると、地中海の塩を原料にしている溶剤をカップ半分くらい湯船に入れ半身浴状態で20分くらい入っていると、汗がどんどん出てくる。それで体をよく乾かしてから布団にもぐり込むと、あっという間に寝てしまう。つまり睡眠薬がいらなくなった、というんだけど、これはいまもその効果は続いているの? このエッセイを書いたのは5年くらい前なんだけど。

椎名それがな。水をたくさん呑んで風呂に入らないと、浸透圧の関係なのかな、体の水分が出てしまうんだ。

目黒ソルト風呂だからか。

椎名水分が必要以上に出てしまうから、注意しないと体によくない。おれは足が痛くなった。もともと痛風の気があったんだけど、それが進行しちゃった。

目黒それがソルト風呂の影響かどうかはわからないけど、とにかく注意したほうがいいということだ。もともと不眠症を治療するための溶剤じゃないしね。じゃあ、いまはまた睡眠薬を呑んでるの?

椎名また元に戻っちゃった。

目黒不眠症の人の話を聞くと、ころっとすぐに寝てしまう自分がバカに思えるよ(笑)。

椎名バカに見える(笑)。何も考えてないんじゃないかって(笑)。

目黒沢野と同じというのはイヤなんだけどね(笑)。あとは細かな話ばかりで、まず昔の公衆電話は「たしか60円まで入った」と書いているんだけど、本当?

椎名本当だよ。調べてみろよ。

目黒10枚くらい入らなかった?

椎名そんなことはどうでもいいんだ。もっと大事なことは公衆電話があるときいっせいにカード式に変わっただろ? あれ、どうしてか知ってるか?

目黒いっせいじゃないと思うけど、まあ、いいや。なに?

椎名10円玉を入れるということは、それを回収しなければいけないということだ。日本全国だぞ。膨大な人数と手間とコストがかかる。それがカード式に切り換えるとまったくいらなくなる。

目黒あ、それ、この本に書いている。

椎名そうか。しかもカードは先払いだからね。

目黒おれ、未使用のやつがいっぱい残っているよ。

椎名全国に死蔵しているテレフォンカードはすごい数だろうな。これだけ携帯が普及すると、テレフォンカードなんて使うこともないからな。

目黒病院の電話はカード式なんだよ。それを知ってれば机の中にいっぱいあるカードを持っていったのに、しようがないから病院で買ったよ。入院するときはテレフォンカードを持っていったほうがいい。

椎名そうか。

目黒四時間働いたら三時間休むっていう「四・三式勤務態勢」って回があって、これ、絶対いまはやってないと思うんだけど(笑)、とりあえず聞いておきます。いまもやってる?

椎名やってない(笑)。

目黒だって意味ないよね。四時間働いたら興が乗ってても中断しなければならないの。で、ぼんやりしてるんだって。何なのよこれ。なんでこんなことを考えたの?

椎名締め切りがいくつもあるから、頭を切り換えるためには休みを途中に入れたほうがいいかなって。

目黒しかも四時間原稿を書いて、三時間休むって、休みすぎだよ。あとはそうだな。文庫版の解説を沢田が書いているけど、あいつはホントにうまい。椎名をちゃんと茶化している。こういう解説って著者を持ち上げすぎると、読んでいてちょっと辛いことがあるんだけど、その点、沢田は一歩後ろにさがって椎名を客観的に描いている。もちろん解説だから最後は褒めるんだけど、そのバランスが絶妙。このナマコ・シリーズは全巻、あいつに書かせればいいんじゃないかなあ。

 『あやしい探検隊 北海道物乞い旅』>>>

旅する文学館 ホームへ