『あやしい探検隊 台湾ニワトリ島乱入』

目黒次は『あやしい探検隊 台湾ニワトリ島乱入』です。『北海道乱入』『済州島乱入』に続く、あやしい探検隊「乱入三部作」の最終篇。書き下ろしで、2016年3月に角川書店から刊行と。これは、冒頭のカラー写真が素晴らしいよね。

椎名どれ?

目黒これ。冒頭に8ページのカラー写真があるんだけど、その最初のページ、これが素晴らしい。椎名の書き文字で「おれたちは南の島の犬みたいに自由だった」とあって、食堂みたいなところに犬が二匹、いや三匹か、写っている。いいよね。その三匹の犬はリードで繋がれておらず、野良犬みたいな雰囲気なの。それで、このコピーだぜ。ホントに素晴らしい。このコピーをそのまま書名にしたいくらい。「乱入三部作」の最終篇だから、これだけタイトルを変えるわけにもいかないだろうから、それは仕方ないけど。何度見てもいいなあ。問題はね。

椎名なんだよ、問題があるのか。

目黒この素晴らしさが内容が見合っていない。

椎名そうかあ(笑)。楽しかったけどなあ。

目黒あのね、実際の旅とエッセイは別だからね。いくら楽しい旅であっても、エッセイでその楽しさが伝わらなくては意味がない。

椎名(笑)。

目黒やっぱり前作の『済州島乱入』を超えていない。あの『済州島乱入』はここで絶賛しましたが、椎名のここ十年の最高傑作であると。

椎名それはちょっとなあ(笑)。他にもいいものを書いてないか?

目黒ただ移動するだけで何のエピソードもなかった『北海道乱入』を反省して、宿は三カ所にする。しかもそのランクを変えて変化をつける。隊員がどんどん入れ代わっていく。しかもそれぞれが日記を残していく。こういう細部がとてもいいんだけど、なによりもいいのは、それぞれの自己アピールというか、レーゾンデートルを韓国語で表現するところ。「海苔をください」とか「油を多めにしてくりさい」とか、みんなが韓国語をマスターしてきて披露する企画がケッサクだった。

椎名あれな(笑)。

目黒ところが今回はなにもなし。これでは、雑魚釣り隊と何もかわらない。どこが違うのって言いたくなる。つまらないわけじゃないんだけど、『済州島乱入』があまりに素晴らしかったから、つい期待しちゃうんだ。そうすると、これではちょっとね。

椎名そうか。

目黒隊員の手記に、「あいかわらずこの集団との毎日は愉快だったが、本当に今回は何もしない日々だった」とあったけど、何もないこと自体はいいんだよ。『済州島乱入』だって、実はたいしたことは何もしていない(笑)。でも、あの各自のフレーズのように、プラスαがよかった。ここにそのプラスαがないんだよ。

椎名おれは原稿を持って行ったしな。

目黒そうそう。特に椎名は何もしないよ(笑)。部屋で仕事してるだけ。ええと、あとは細かなことだけ。まず、列車の無座というチケット。

椎名日本の自由席券とは違う。座っちゃいけない。

目黒立ち乗り券だ。

椎名床に座るのはかまわない。

目黒83ページの写真がいいね。

椎名どれ?

目黒宍戸の写真。上半身裸で、下は漁師ズボンで、頭に手拭いを巻いて、釣った魚を持ち上げている。どう見ても本物の漁師だよね(笑)。

椎名編集者にしておくのは惜しい(笑)。

目黒ただし、この写真はどうかなあ。

椎名なに?

目黒153ページのいちばん上の写真。これ、何が写っているか、わかる?

椎名なんだろう? 写真説明があるだろ?

目黒それがここにはこうあるだけ。

料理長のザコは長期の合宿生活を考え、母親のように隊員の健康を気にかけてくれる。かあちゃんみたいだ。しかしここでも天野はエイリアンのごとく食いまくった。

これでは何が写っているのか皆目わからない。以前から何度も、こういうふうに椎名のエッセイ集に(特に、雑魚釣り隊と探検隊の本に)何が写っているのかわからない白黒写真が載っていることを批判しているんだけど、全然改まっていない。

椎名いいじゃんそんなの。

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