『活字たんけん隊 めざせ、面白本の大海』

目黒次は『活字たんけん隊 めざせ、面白本の大海』です。図書の1998年12月号から2008年11月号までに連載したもので、2010年1月に岩波書店から新書として刊行と。10年間も連載して、これ1冊ということもないから、きっと断続的に連載ということでしょうね。

椎名飛び飛び連載だったんだろうな。

目黒このシリーズはこれまでに3冊出ていて、ついでなのでその書名もここに掲げておきましょう。


 『活字のサーカス』1987年
 『活字の博物誌』1998年
 『活字の海に寝ころんで』2003年

この『活字たんけん隊 めざせ、面白本の大海』は、これら3冊に続く4冊目で、あとがきで椎名は「わが活字四部作」であると書いている。タイトルはいちばん最初がいちばんいいね。2冊目はまだいいけど、だんだん落ちてくる(笑)。これは中身の話じゃなくて、タイトルだけの話ね。内容は相変わらず面白いのに、このタイトルでは手に取ってくれる読者が減るんじゃないかと心配になる。これは椎名がつけたの?

椎名編集部にまかせた。

目黒なるほどね。ま、いいか。細かな話がいくつかあるんですが、まず「イヌイットは七世代先のことまで考えて自分の行動を決めている」とあるんだけど、これは具体的にどういう意味?

椎名それが覚えていないんだ。何かの本で読んだと思うんだけど、それ以上のことがわからない。

目黒この本のなかに、「あれはなんの本であったか」とこのフレーズを突然思い出すくだりが出てくるんだけど、まだそれ以上のことはわからない?

椎名わからない。

目黒七世代というんだから、三百年か四百年先のことを考えて、このへんは荒らさないでおこうとか、そういうことなんだろうね。そうは思うんだけど、具体的に知りたくなる。まあ、そのフレーズが印象に残ったんだろうな。

椎名そうだな。

目黒あとはこういうくだりがある。「レナ川は北極圏を源流にシベリアの中心都市イルクーツクまで四四〇〇キロを流れる世界9番目の大河だが、河口には北海道くらいの広さの中州がある」というんだよ。

椎名すごいよな。

目黒もうちょっと聞いて。続けてこうあるんだ。「その以前に全長六五〇〇キロのアマゾン川の河口には九州ほどの広さの中州があると知って驚いたものだが、スケールはそれを上回るのである」。

椎名驚くだろ?

目黒いや、おれ、ぴんとこないんだ。

椎名なにが?

目黒川の中州が九州や北海道の広さというんだから、それは驚きだけどさ。椎名がここで驚いているのは、九州どころじゃなくて北海道なんだぜ、という驚きなんだよ。

椎名アマゾン川の九州でも驚いたのに、今度は北海道の広さなんだから、誰だって驚くだろ?

目黒あのさ、九州と北海道って、そんなに違うの?

椎名違うよ。

目黒どのくらい?

椎名倍くらい違うだろ?

目黒疑うわけじゃないけど、ちょっと待ってね。こういうのは調べればいいんだ。

椎名調べなくたってわかるだろそんなこと。

目黒ホントだ。すごいよ、倍どころじゃないよ。倍以上だ。

椎名当たり前だろ。

目黒みんな、知ってたかなあ。ま、いいや。ええと、成田空港で、「浴衣タイプの寝巻を着てスリッパ姿」の外国人を見たってあるんだけど。

椎名なにか勘違いしてたんだろうな。みんな、注目してたなあ。

目黒スリッパで飛行機は乗れるんだ。じゃあ、下駄でもいいのかな。

椎名その姿で彼は帰国したんだけど、国に帰って自慢したかったんだろうな。これが日本だぜって。

目黒ふーん。

旅する文学館 ホームへ