『ももんがあ からっ風作戦』
目黒ええと、『ももんがあ からっ風作戦』です。赤マント・シリーズの新刊だね。2009年1月に文藝春秋から本になって、2012年に文春文庫と。まず、これが面白かったな。中国とロシアの高級な宿は水洗便所になっているが、拭いた紙を便器に捨ててはいけないと。
椎名つまるからな。
目黒必ずクズカゴに捨てる。だから日本に帰国してからも、ついクズカゴを探してしまうっていうんだけど、これはケッサクだね。ええと、細かな話なんだけど、いい?
椎名いいよ(笑)。
目黒ベトナムでアンティークの置き時計を買ったとき、値下げ交渉に3時間かけたっていうんだけど、これ、嘘でしょ?
椎名本当だよお。
目黒だって椎名がそんなことに3時間もかけるわけないじゃん。
椎名欲しくて何度もその店に行ったんだよ。
目黒その時間を足して3時間になったというの? それも嘘だね。椎名の性格からしてそんなことはあり得ない。
椎名一緒に行ったやつの話だったかもしれない(笑)。
目黒それならわかるけど、ここでは自分が3時間も値下げ交渉したことになっている。すぐに嘘とわかることを書いてはダメ!
椎名はい。
目黒あとは自転車に凝る話が出てくるんだけど、これ、知らなかった。そんな時期があったんだ。いまでも自転車に乗ってるの?
椎名いや、1カ月で飽きた(笑)。
目黒このころ、すごいよね。池林房まで行ってるし。
椎名池林房にいくには甲州街道コースと、大ガードコースがあるんだけど、どっちも危ないんだよ自転車だと。車はびゅんびゅんくるしさ。
目黒多摩川にもみんなで行ってるね。
椎名迷惑だよなあ(笑)。みんなを招集してさ。
目黒おまけに万が一のために、車も出してるよね。
椎名ちゃんと麻雀牌とテーブルも積んでいる(笑)。
目黒意外なのは洗濯が好きってこと。なんで?
椎名原稿を書いてると、つまるだろ。そんなときに洗濯をすると、目に見える達成感がある。
目黒なるほど、原稿は遅々と進まなくても洗濯ははかどるか。
椎名困るのは一つだけだな。
目黒なに?
椎名ようやく原稿を書き出したときに、洗濯機がピーッと鳴ったりする(笑)。
目黒原稿を中断して干さなきゃならない。
椎名いま鳴るのかよって思うよな。
目黒あとね、椎名と2つしか違わないのに、おれの知らないことがまたここにも出てくる。柳家金語楼がラジオで言っていたというやつ。「ちっちっ、血をますマスチゲン。みんなの歌まねのど自慢。まっまっまったく愉快だね」。こんなの、おれ、聞いたことがないよ。椎名が小学生のころ?
椎名まだ耳に残ってるよ。
目黒おれだって小学生の低学年のころはラジオを聞いてたんだよ。テレビなんてまだなかったから。でも、まったく記憶にない。椎名とは違う国に生まれたんじゃないかって時々思うよ。ええと、あ、これは面白かった。花言葉があるなら、野菜言葉もあっていいんじゃないかって項。たとえば、玉ネギは「従順、つくす心、ひたむき、質素」で、だいこんは「おおらか、寛容、庶民的」。
椎名あれがいいだろ、じゃがいも。
目黒ええと、じゃがいもは「勤勉、献身」か。
椎名もう一つあるだろ?
目黒えっ、これ? 「犠牲フライ」?
椎名いいだろ?
目黒よくないよ。
椎名そうかなあ。
目黒そうだ、この文庫の解説で、沢野が書いているんだけど、買ったばかりのバーバリーのコートを自慢したら椎名が着て帰っちゃった、という話。これはいくらなんでも沢野の創作でしょ?
椎名いや、本当だよ。
目黒ええっ、実話なの?
椎名あのころは沢野がおれのを着たりとか、そんなのしょっちゅうだったよ。
目黒所有権が曖昧だったの?
椎名いいじゃんそんなの。
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