『わしらは怪しい雑魚釣り隊』

目黒次は『わしらは怪しい雑魚釣り隊』。雑誌「つり丸」に連載し、2008年マガジンマガジンから単行本になって、2009年に新潮文庫と。ええと、まず間違いをここで訂正します。

椎名間違い?

目黒この本のあとがきで、「怪しい探検隊」シリーズはすべて角川文庫に収録されていると書いていて、これまでシリーズは7冊であると。著者はあとがきでこう書いている。ところがシリーズはこの時点で8冊ある。

椎名えっ?

目黒1998年に『怪しい探検隊 焚火発見伝』が小学館から出ている。これはその後、1999年に小学館文庫に入っている。だから「怪しい探検隊」シリーズは、本書が出るまでに8冊あったと訂正します。

椎名ふーん。

目黒さらにそのあとがきで、『怪しい探検隊 バリ島横恋慕』の元版刊行年を2002年としていて、それから10年後にこの『わしらは怪しい雑魚釣り隊』が出たと書いているけど、さっき言ったように『わしらは怪しい雑魚釣り隊』が出たのは2008年だから、『怪しい探検隊 バリ島横恋慕』の元版刊行年を2002年だとすると、その6年後になって計算が合わない。もうデタラメだね(笑)。

椎名どうなってんだ?

目黒あなたが書いたあとがきだからね(笑)。そのあとがきで、『怪しい探検隊 バリ島横恋慕』の元版刊行年を2002年としたのが間違い。ちなみにこのあとがきの冒頭にシリーズ7冊の刊行年を書いているんだけど、これはすべて角川文庫に入った年で、元版の刊行年ではない。だから、この2002年というのも『怪しい探検隊 バリ島横恋慕』が角川文庫に入った年で、元版の刊行年は1998年。ほら、『わしらは怪しい雑魚釣り隊』が出たのは2008年だから、ちょうど10年後になる。

椎名10年ぶりの「怪しい探検隊シリーズ」だというのは正しかったんだ。

目黒いい機会なので、「怪しい探検隊シリーズ」の本書が出るまでのシリーズ8冊の刊行年を書いておきます。カッコ内は文庫刊行年。


『わしらは怪しい探検隊』       1980年(1982年)
『あやしい探検隊北へ』        1984年(1992年)
『あやしい探検隊 不思議島へ行く』  1985年(1993年)
『あやしい探検隊 海で笑う』     1988年(1994年)
『あやしい探検隊 アフリカ乱入』   1991年(1995年)
『あやしい探検隊 焚火酔虎伝』    1995年(1998年)
『あやしい探検隊 焚火発見伝』    1996年(1999年)
『あやしい探検隊 バリ島横恋慕』   1998年(2002年)

こんなの調べればすぐにわかるのに、どうして編集者がチェックしなかったのか。新潮文庫に入ったときもそのままだから、新潮社の校閲部って業界では有名なのに、ホント、どうしたのかなあ。

椎名ふーん。

目黒ただね、あとがきをよく読むと、ここに書いた刊行年は角川文庫の刊行年とも読めるんだよね。ようするに、椎名がまぎらわしい書き方をしている。いずれにしても、ここに書いてある刊行年では「10年後」にならないし、「すべて角川文庫に収録されている」というのも間違いだから、校正の段階で直すべきだったと思う。

椎名ふーん。

目黒これは「第3次あやしい探検隊」だね。第1次が、小安とかヨダ青年とか私もここに入るか、当時の椎名のごく身近にいた友人たちを組織して日本各地の島へ行ったときの素人見聞録。第2次が野田知佑、中村征夫、佐藤秀明、風間深志などのプロが海外まで足をのばした「いやはや隊」行動録。そういう「アヤタン」史上でいうと、この第三次は釣りを主目的とする新しいかたちだけど、いやあ、久々に面白かった。

椎名そうか(笑)。

目黒いやはや隊のときは、みなさん、大人でしかもプロだから、椎名もおちょくれないよね。実際の旅は面白かったんだろうけど、そういう集団の記録を書くというのはまた別のことだから、冷静に書かれてもあまり面白くない。実際の小安はペッペッと唾をはいていないし、ニゴリメ高橋の目は濁っていないけれど、そういう現実を思い切りデフォルメすることで初期探検隊の行動録は超面白エッセイになったと思う。ところが、そういうデフォルメがいやはや隊では出来ないから、椎名の筆に躍動感がない。

椎名そうだなあ。

目黒ところが今回は、長老P・タカと西澤のキャラが図抜けている(笑)。もうサイコーだね。

椎名ありのままを書いているだけだぜ(笑)。

目黒デフォルメすることもなく、モデルが面白かったと(笑)。何度も同じ話を繰り返す長老の話を、奴隷たちが仕方なく聞いている光景がなによりもケッサク。少なくても十五回は聞かされたと椎名は書いているんだけど、これがデフォルメだよ。いくらなんでも十五回はないだろ。

椎名事実だぜ(笑)。

目黒「自分はいかにしてみたらし団子を好きになったか」なんて話を延々三十分も聞きたくないよね、たしかに。さらに天ぷらをつくっていると、「それでは小麦粉のまぶしかたが足りない」とか、「箸の先を油にくつけて衣のタレがいったん沈んですぐに上がってきたらいいんだ」とか、「もうナスを入れるべきだ」とか、なにもしないうちにいろいろ言うから、たしかにうるさい!

椎名十五秒で済む話を延々三十分もするんだ。

目黒もう一つは、陽気で乱暴ですぐにおちこむ西澤のキャラもおかしい。こういうキャラを書くと椎名の筆はさえまくる。文庫版の嵐山光三郎の解説もいい。うまいよなあ嵐山さんは。とにかく傑作ですこれは。

旅する文学館 ホームへ