『読書歯車のねじまき仕事』
目黒それでは『読書歯車のねじまき仕事』です。本の雑誌に連載した「今月のお話」をまとめたもので、2005年7月に本の雑誌社から出ています。ええと、この本の冒頭に、駅の売店などでピーナッツとサキイカ、あるいは柿の種などを入れたビニールパックに「珍味セット」などと書いてあるが、なぜこれが「珍味」なのか、というくだりがある。たしかにそうだよね。ピーナッツもサキイカも柿の種も、珍しいものではない。それなのになぜ「珍味」というのか。言われてみれば不思議だよな。
椎名それがどうかしたのか。
目黒なぜ珍味なのかと疑問を呈しているのに、その回答がない。
椎名回答なんてないよ。おれはなぜ珍味なのか、それが不思議だと書いただけだよ。
目黒えーっ、椎名の書き方だと回答があるものと思うぜ。
椎名それは君の読み方がおかしいね(笑)。
目黒じゃあ読者に聞いておきます。あなたはこの文章をどう読みますかって(笑)。
椎名ぜひ読者の意見を聞いてほしい(笑)。
目黒ま、いいや。ええと、面白かったのは、中国の話なんだけど、人民政府から委託を受けた人が自宅を改造して公衆便所を経営するって話。すごいよねこれ。
椎名これは奥が深いんだ。文化大革命のころに個人の便所は贅沢であるといっせいに壊されたんだね。それでその代わりに公衆便所を作ったという歴史がある。
目黒ふーん。あとは、ミステリチャンネルの「フロスト警部」1時間45分を見る話が出てきて、「いまテレビでいちばん面白いのはとにかくこの番組である」と椎名は書いている。大絶賛だよね。
椎名お前、見なかったの?
目黒見てない。これはシリーズということ? これは10年前の本だからこのときに放映していたということだよね。いまもやってるの?
椎名いまはやってないか。再放送はしているかもしれない。なにしろ四十何作あるからね。
目黒ということは、原作のテレビ映画化ということではなく、オリジナルということなんだ。椎名は原作は読んでるの?
椎名テレビで見てから原作を読んだ。
目黒ふーん。ま、いいや。ええと、大阪梅田の高架下の古本屋街に椎名はよく行っていて、何度かエッセイにも書いているんだけど、この本にも出てくる。しかしよくそんな時間があるよね。ざっと流しても1時間以上はかかるでしょ。
椎名いく店は決まっているからな。あとは新幹線が出るまで時間に余裕があるんだよいつも。
目黒どういうこと?
椎名定期的な仕事で大阪に行くんだけど、手配してくれる新幹線の時間にいつも余裕がある。たぶん会議が遅れてもいいような配慮だろうな。遅い時間に設定しておけば、少々会議が遅れても問題はないと。
目黒早く終わったのならチケットを変更して帰京すればいいじゃん。そういうことはしないんだ。
椎名だってそういうときしか梅田の高架下の古本屋にいけないだろ。いつも掘り出し物があるんだぜ。
目黒ま、いいけど(笑)。ええと、池袋のジュンク堂書店で、椎名が選んだ本を並べて販売する「シーナ書店」の半年間の売り上げランキングがこの本に載っているんだけど、白水社のエドワード・ホール『かくれた次元』という本が63冊売れて6位にランクインしている。すごいよね。半年間に63冊ということは月に10冊だぜ。30年前に出た本が、しかも2800円もするのに月に10冊も売れるなんて、すごいよね。
椎名おれが売ったんだよ(笑)。お前、読んだか?
目黒おれも椎名に言われて買ったけど、まだ読んでない(笑)。
椎名読めよ面白いんだから。
目黒わかりました。そのうち読みます(笑)。ええと、そのランキングで椎名本のなかでいちばん売れたのは『くねくね文字の行方』だったらしいんだけど、あれは改題本だから新刊だと誤解して買った読者がいたんじゃないかなあ(笑)。
椎名お前なあ(笑)。
目黒そしてね、『いろはかるたの真実』はこの間、売れたのはたった1冊だったというんだけど、その人はエライと申し上げたい(笑)。
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