『にっぽん・海風魚旅2 くじら雲追跡編』
目黒それでは『にっぽん・海風魚旅2 くじら雲追跡編』です。週刊現代のグラビアに連載していた写真付きの旅ルポの第2弾です。2003年10月に講談社から本になって、2007年2月に講談社文庫と。自著を語る、にはこうあります。
自分で写真を撮りながら旅をしていくのだが、まだデジタルカメラが一般的になる前だったので、持っていく荷物の中ではカメラとフィルムがかなりの重量を占めていた。けれどチームを組んでいたのでそれらを分散してみんなが持ってくれたから、フィルムカメラ時代の撮影行としてはフットワークよく動けたシリーズだ。
どこからいこうか。本の話からいこうか。宮古のホテルに泊まったとき、ホテルの窓から隣接している巨大なドイツ風のお城が見えて、いったい何だろうと思ったら、ドイツ村だと。ホテルにあったパンフレットを見たら、一八七三年にこの宮古島の近くでドイツの船が難破して酷い状態になったとき、島の人々が救出や看護に力をつくして、以来ドイツのその関係者と親睦を深めるようになったというんだね。その関係でこの地にドイツ村も出来たらしい。で、帰りに空港近くの大きな書店に入ったら、『ドイツ商船R・J・ロベルトソン号宮古島漂着地』という本を発見。宮古島におけるドイツ船遭難の出来事が詳しく書いてあったと。
椎名書いた人は、ロベルトソン号の船長だね。
目黒そのくだりで椎名はこう書いている。
中国を出航したのち嵐に遭遇、宮古島まで流され遭難していく様子が詳しく語られている。当時のドイツ人から見たら宮古島は名もない東洋の、未開に近い島の一つであったようだ。島の人に救出されたあとの生活ぶりなどは当時の西欧人の目で見た日本の離島文化を活き活き描いていて、たいへん面白かった。
以前、東北のどこだっけ、遭難したメキシコの船を日本人が救出して、現地の人と交流した記録が本として出版されたって話を椎名が書いたことがあったよね。
椎名そうだっけ?
目黒そうだよ。こういう話が日本全国にあるのかもしれないって気がしてくる。我々が知らないだけでさ。あとですね。そうだ。おいしいラーメン屋の見分け方が面白かった。これは椎名と一緒に旅している編集者の一人が言いだした説なんだけど、
- ①小さい店で路地の裏にある
- ②暖簾が汚れている(客が多いから)
- ③店の前に車や自転車が止まっている
- ④芸能人の色紙などが貼ってない
- ⑤厨房でたくさんの人が働いている
という五条件があって、それにぴったりという店を見つけて入ったら、見事にまずかったというオチ(笑)。まあ、何事にも例外があるってことだね。
椎名もう一つの条件を付ければ完璧だよ。
目黒なに?
椎名駐車場が第1から第3まであること。
目黒小さな店なのに第3までの駐車場を持つラーメン屋なんてあるの?
椎名あるよ。
目黒あとね、南紀の串本の項に出てくるワゴン車のメンズショップの話が面白かった。漁師相手に服を売る移動販売だけど、これでよく商売になるね。串本には普通のメンズショップはないの?
椎名あるよ。
目黒じゃあ、そこで買うよね。わざわざ、このワゴン車で買うかなあ。
椎名常連客がいるらしいよ。
目黒メンズものを販売するそのワゴン車はずっと串本近辺にいるの?
椎名そのワゴン車で九州から北海道まで旅してるらしい。主に港町、商品は男もの、しかも中年以上が専門。
目黒若者向きはないのね。
椎名そういうのはない(笑)。フーテンの寅さんだよな。寝るのは車の中。いろんな商品を車に積んで全国をセールスして渡り歩いている人は結構多いみたいだね。そうそう、どこかでその人ともう一度会ったよ。
目黒旅の人生かあ。
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