チャンピオンベルト
パタゴニア
これはね、パタゴニアのプンタアレナスという街で、ケープホーンに渡る船を捜している間、一週間くらい足どめをくらっていたんだけど、その間に手作りした「チャンピオンベルト」。
ちょうどその頃、息子の岳は小学5年生くらいだったんだけど、住んでいた家の8畳間がプロレスリングになっていて、毎日毎日、ヤツとプロレスをやっていたんだよ。
このタタカイが本格的で半端じゃないんだ(笑)。
なんかの拍子に、口を切ったりして血が出る訳なんだけど、その血を額になすりつけて「にやっ」と笑ったりね。もう完全にリングにのめり込んでた。
家に遊びにきた野田知祐さんは俺たちのタタカイを見て真剣に呆れていたなぁ。
一枝さんもその部屋が汗臭くなってしまったし、畳は擦り切れ放題だったから、客間にするのをあきらめてた。
で、パタゴニアにひと月半旅することになったのだけど、岳としばらく試合ができなくなる。そこで岳には、「俺は向こうでチャンピオンになってベルトを持って帰るから、お前も鍛えておけと」と言って旅立ったんだ。
岳との本気プロレスは、「チャンピオンシップ」として争っていたんだけど、「チャンピオンベルト」がなかったし、パタゴニアでチャンピオンになった証しとしてベルトをもって帰らなきゃならない。
船待ちの足どめをくらった1週間を利用して、「アギラ」という金物屋に通いつめて、部品を購入して完全手作りの「パタゴニア・チャンピオンベルト」を作り上げたんだ。
「アギラ」には毎日通っていたから、店のレイアウトを完全に覚えちゃってて10年後に行った時にも何がどこに置いてあるかスラスラ思い出せたくらいだったなぁ。
チャンピオンベルトのベースは鉄製の分厚いものでね。たぶんプールの排水口のゴミため(笑)。両サイドにあるエンブレムはバイク屋で買ってきて、このベルト部分は婦人用のもの。
それでこれを持って日本に帰った。
岳は約束通りに鍛えていただろうか、と彼の部屋にいったらさ、「毎日やること。ふっきん20回!」と書いたつもりなんだろうだけど、
バカだからさ、「ふきん」になってるの(笑)。
まぁそれで、「向こうでチャンピンになったのでベルトを持ち帰ったぜ」と言って、「チャンピオンベルト」を見せたら、奴は半分信じて、半分信じてなかったな(笑)。
もうひとつのベルト、下の写真だけども、これはジュニアヘビー級。
ジュニアヘビーだからちょっと小さいんだ(笑)。
これは、いろんな思い出がつまった手製の土産なんだよ。