202杯目:小を捨てて大に就く、はずだ
国道20号線を中心に近所の足として活躍してくれた
東京都渋谷区/竹田聡一郎撮影
(“チェキ” instax mini 90 ネオクラシック)
竹田10月も終わりです。
椎名毎年、言ってるけど今年もあっという間だった。
竹田そろそろ年末進行も始まりますか?
椎名そうだねえ。でも、まあたいしたことない。君も忙しいの?
竹田年末進行は特に関係ないのですが、12月にカナダに中期出張があるのでその準備というか、前倒しで大掃除をしております。
椎名いいことじゃないか。
竹田そうなんですけどね、勢い余って手付かずの実家にまで手を出してしまい、畳の張り替えやフローリングのワックス塗り替え、網戸の修繕やエアコンクリーニングまで手配しました。
椎名けっこう大事だな。
竹田集英社の『続 失踪願望。 さらば友よ編』に書かれてましたが、椎名さんも一昨年にご自宅の3階や屋根裏の大掃除に取り組んでいましたよね。
椎名疲れた。
竹田「外国で買ってきた装丁の面白い本やかっこいい文具などが発見されて『お、これはいいぞ』と一瞬、迷うが十数年、机の引き出しに眠っていたということは、それはもう不用品なのだ」という一説があります。その通りだなあ、と思って実家のガラクタを思い切って処分しました。
椎名どういうものが出てくるの?
竹田僕のスウェーデン土産のお洒落なティッシュボックスとか、母がネパールで買ってきた怪しいティッシュボックスとか、姉がアメリカでたくさん仕入れた無機質なティッシュボックスとか。
椎名変な家族だな。
竹田先月、発売された『真夜中に吠えたくなって』(KADOKAWA)にもありましたが、リモコン問題。エアコン、テレビ、照明器具のリモコンがわんさか出てくる。
椎名あれ、混乱するよなー。だからまとめるリモコンを買うけれど、それもなくなる。
竹田そして探すのをやめた時、見つかることもよくある話で。
椎名お、陽水だな。でもなんであれ、いきなり踊らないといけないんだ?
竹田知りませんよ。あとはとにかく母の服や鞄が多かったです。「これ使ってないなら捨てるか誰かに譲るかしよう」と提案しても「なんかの時に使うから」と応じない。
椎名「なんかの時」と「いつかどこかで」は片付けでは禁忌だからな。結局、掃除なんて整理整頓ではなく、ひたすら処分の決断とゴミ出しだからな。
竹田本当にそうですよね。沢野ひとし画伯の人気シリーズの原点『ジジイの片付け』(集英社インターナショナル)には「引き出しを検討せよ」なんていう見出しがありますが、それに従って引き出しの中のペンや文具を厳選したのですが、インクの枯れたボールペンとか使いにくい付箋とかわんさかありました。
椎名ペン立てやブックエンドは捨てるわけにはいかないしなあ。
竹田そうっすね、難しいところです。でも文具や書籍を引っ張り出して埃を払ってまた本棚に収納する作業は比較的楽しい。あとは無事にゴミを処分できれば年末に向けて健やかに暮らせそうです。
椎名そうかあ。うちでもまた掃除する時は手伝ってくれ。
竹田もちろん。書籍とかウイスキーとか出てきたらかっぱらいます。
椎名好きにしなさい。
竹田そして、改めてのお礼とご報告です。
椎名なんだい。
竹田ここでも触れたのですが、26杯目でいただいたルイガノの自転車「シーナ・ルイガノ」が限界を迎えました。変速機が回らなくなってしまって、よりによっていちばん重いギアで止まったので、全力で漕がないと動き出さない。
椎名修理できないの?
竹田自転車屋さんに持ち込んだら変則機をはじめ全体的に劣化していて「寿命だね。よく乗ったよ」と慰められました。
椎名そうか。どっか行ったりしたの?
竹田基本的には近所の買い物です。神宮球場、東京タワーあたりは行きました。一度だけ、多摩川沿いを下って川崎まで遠乗りしたのはいい思い出です。
椎名そうかあ。
竹田でも95杯目では転んで骨折もしたけれど。
椎名ははは。
竹田ともかく大掃除完了です。今年もあと2ヶ月、頑張りましょう。
椎名忘年会ってほどでもないけれど、年末にみんなで酒でも飲もう。
竹田うす。声かけておきます。
椎名誠:旅サケ作家。芸術の秋なのでフランス映画『白い馬』(Crin blanc/1953年フランス)を観た。
竹田聡一郎: 麦酒がぶ飲みライター。読書の秋なので『潮音』(宮本輝/文藝春秋)を読んでいる。
