192杯目:たまには詠んでもいいではないか
写真を見てすぐに詠める人はすごい
青森県八戸市/椎名誠撮影
(NIKON Df)
竹田前回、盛岡のイベントの中での「シーナさんのキャッチコピー講座」に触れました。
椎名うん、いい企画だった。
竹田編集者としての椎名さんのタイトルの付け方が学べて興味深かったのですが、盛岡といえば歌人石川啄木の街でもありますね。
椎名そうだね。「新婚の家」に行ったけれど、普通の家だった。
竹田大通りの少年啄木像には「新しき明日の来るを信ずといふ自分の言葉に嘘はなけれど」という歌が刻まれています。
椎名お城に勝手に寝転んだのはなんだっけ?
竹田それじゃただの不審者ですよ、打ち首。「不来方のお城の草に寝ころびて空に吸はれし十五の心」も名歌で、盛岡城跡公園には碑があります。
椎名啄木がどうしたの?
竹田啄木というより、歌や句ですね。これだけ盛岡に通ってて詩情を掻き立てられたりはしないのか、という話です。
椎名うーん、あれはあれで独特の世界だからねえ。
竹田椎名さんの盟友のひとり、木村晋介先生は俳句誌「牧」の編集長でもあります。
椎名彼は言葉の重ね方がうまいんだ。
竹田誌面の中でTBSの『プレバト!!』という芸能人が俳句を詠む番組に触れていたのですが、ご存知ですか?
椎名地上波はあんまり見ないからなあ。でも芸能人が添削されているのは見かけたことがある。
竹田木村先生はその番組について「俳句をエンターテイメントにしちゃった。これは画期的」と発言しています。
椎名本来、俳句や短歌は無限に遊べるジャンルだからね。
竹田僕は『ダ・ヴィンチ』の「短歌ください」というコーナーが好きで、穂村弘さん選の文庫も読んでいるのですが、歌は難しい。
椎名今、『ダ・ヴィンチ』ってしろめし君が編集長だろ?
竹田そう。雑魚釣り隊のメンバーで、椎名さんが「しろめしおかわり君」と命名した似田貝さんが編集長ですね。実は彼にバレないように「短歌ください」のコーナーに何度か応募しているのですが、採用されたことがない。
椎名ははは。文学賞なんかでもそうだけれど、ああいう文化的な雑誌で一般公募作品を見るとひやりとすることは多いよな。
竹田ひやり?
椎名才能の片鱗があって、我々プロでもうなるようなものがある。
竹田ああ、わかります。ちょっと背筋が伸びるというか。
椎名そうそう。「詠む」という動詞は歌にしか当てはまらないから、うまいこと残してほしい。
竹田最近は「ネット短歌」なんていう言葉もあって、若い世代の間でも静かに広がっているようです。
椎名そうなの? 活字離れが進んでいるんじゃないの?
竹田これはあくまで僕の意見ですが、文字数が限られていたりするSNSと親和性が高い気がします。長々と単語を重ねるのではなく、短い言葉で人の耳目を惹く。
椎名ふうん。そんなもんか。
竹田今度、雑魚釣り隊で歌会でも句会でもやってみましょうか。
椎名ちょっと詠んでみてくれよ。
竹田腹減ったとりあえず生乾杯だ。
椎名まあそれじゃ『ダ・ヴィンチ』に採用されないな。単語ももちろんだけど、音やリズムはも大切だ。
竹田そう思って椎名さんの著書のタイトルを調べたのですが、『酔うために地球はぐるぐるまわってる』(講談社)とか『風景は記憶の順にできていく』(集英社新書)なんてのもある。これ、どっちも売れたし、音やリズムは真剣に考えたほうがいいんですね。
椎名ふふふ。
竹田あ、これあんま考えてないやつだ。
椎名ふふふ。
椎名誠:サケ作家。9月もどうせ暑いんだろうからカクヤスで酒をたくさん頼んだ。ハイボールも好きだが炭酸で割るのが面倒なのでそれは池林房で飲む。
竹田聡一郎:麦酒ライター。「Lit work place」もいいが、野沢温泉「里武士」、沼津「ベアードタップルーム沼津フィッシュマーケット」、広島「重富ビールスタンド」に行きたい。
