190杯目:愛機の系譜
十余年ほど前の夏休み
北海道県余市町/椎名誠撮影
(NIKON Df)
竹田美しい写真ですなあ。井上陽水の名曲が流れてくるようです。
椎名これはマゴたちと北海道で過ごした正しい夏休みだ。
竹田最近は北海道の夏もだいぶ暑いのですが、風があって湿気がないからやっぱり過ごしやすい。
椎名都市部はコンクリートばかりだから熱がこもるんだろうな。東京は巨大な蒸し風呂だ。
竹田この写真、まさに緑と土と海があって、熱を逃してくれそうですもんね。こういうカットは狙って撮るんですか?
椎名いや、取材旅ではないから、ぼーっと見ていて「ああ、なんか撮れそうだな」と思っただけ。
竹田カメラは常に持ち歩いてました?
椎名そうだね。行程にもよるけれど、だいたい持っていたかな。
竹田椎名さんって歴代のカメラ、これまで何台くらい使いました?
椎名10台から20台くらい。
竹田ぜんぶ覚えてます?
椎名さすがにすべては覚えてないけれど、印象的なモノはあるよ。
竹田ぜひ聞かせてください。できれば時系列で。
椎名中学の頃だったかな、兄貴の使っていたヤシカのフレックスのAを借りていた。
竹田やしか?
椎名ヤシカっていう長野にあった国産メーカーだよ。二眼レフに感動したな。
竹田10代の頃からカメラは好きだったんですね。
椎名うん、高校に入って初めてカメラを買った。中古のペンタックスSP。これはサラリーマンになっても長く使っていた。使いやすかった。
竹田うちの母の父、つまり僕のじいちゃんが写真館をやっていたんです。
椎名へえ。どこで?
竹田横須賀市です。もうなくなっちゃたけれどユリ写真館。そのじいちゃんが散歩に行く時にこのペンタックスを首から下げていて時々、撮ってくれたのを覚えています。だからあのフォルムが「Theカメラ」みたいなイメージが強いっす。
椎名確かにカメラらしいカメラだった。その後、作家になる前後からニコンを使い始めた。FやF3。
竹田近年はニコンのDfを使ってらっしゃいますね。
椎名そうだね。操作しやすいし手になじむ。
竹田ライカを買ったのはいつ頃ですか?
椎名作家になって初めてもらった文学賞の賞金で買ったんだ。憧れのM6。嬉しかったなあ。それまでは記録として写真に残していたものも多いけれど、ちゃんと構えて「いい写真を撮るんだ」と改まったのを覚えている。
竹田現代はスマホでなんでも撮れちゃうけれど、そのぶん狙った写真が撮れた喜びは薄まっているかもしれませんね。
椎名君は何を使っているの?
竹田今はボディがソニーのα7でレンズはタムロンです。
椎名タムロンはしっかりしたメーカーだよな。光が効果的に入る印象がある。
竹田遠景も近場も1本でいけるので、旅取材ではすごく助かっています。
椎名カメラバッグを持って旅に出るの?
竹田そうですね。インナーケースごとリュックに入れて歩き回ってます。
椎名インナーケースって四角いやつか。
竹田そうです。椎名さんがよく使っている手提げや肩掛けみたいなのもいいんですけれど、両手をあけておきたいんですよね。
椎名旅先だとカバンの底にカメラを入れていることが多くて、カバンを持つと重いんだけど、持っている実感はある。
竹田そうですよね。その重さが楽しいし頼もしい。逆にカバン背負って軽いと「あれ!? どっかに置いてきたか?」とすげえ焦る。
椎名非常によく分かるよ。特に昔はフィルムだったのでカメラと付随した周辺機器や道具はある種、厳かだった気がする。
竹田ところで椎名さん、今撮りたいものってあるんですか?
椎名昔、チベットでよく撮ってたんだけど、じいちゃんばあちゃんの顔のアップかな。
竹田いいじゃないすか。どのカメラで撮ります?
椎名ライカだね。
竹田ライカと共に東北か沖縄、撮影旅しましょうよ。
椎名それもいいなあ。涼しくなったらな。
椎名誠:この夏は薬味たっぷしの素麺で乗り切りたい。名古屋場所は関脇復帰の若隆景に期待だ。
竹田聡一郎:先月のアジ釣りは楽しかったなあ。この夏はタコ釣りに行きたい。茹でダコで瓶ビール。
