183杯目:迷子のエビ

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瓶ビールを開けてみたらちゃんと開いた
東京都渋谷区/竹田聡一郎撮影
(“チェキ” instax mini 90 ネオクラシック)

椎名何だい、このエビは?

竹田それはこっちのセリフでして。

椎名どういうこと?

竹田ほら、覚えていない。

椎名説明してくれよ。

竹田年末に勿来で合宿していた頃、10年くらい前ですかね。

椎名吉例の粗大ゴミ合宿だなあ。

竹田あの合宿は無意味だけれど愉快だからなのか、椎名さんはけっこういろんなところに書いているんですよ。

椎名目黒に「書きすぎだ」と怒られたことはある。

竹田ははは。でも週刊エッセイを何本も書いているとネタとしては新鮮なわけですからねえ。この前、おそらく僕が初参加した年のことを『アザラシのひげじまん』(文藝春秋)で読みました。

椎名で、勿来でどうしたんだよ?

竹田椎名さんは何年かに一度、いらなくなった書籍とか靴とか服を、どさっとくれるんですよ。それが合宿の催しとしてはけっこう楽しくて。

椎名歳末バザール。

竹田取材や撮影で1度着ただけの服や、ほぼ未使用の靴なんかもあり、けっこう高級品や掘り出し物がある。奪い合いになるんです。

椎名いいことじゃないの。

竹田一方で、大掃除の時期だからでしょうね、「なんだコレ」というどこかのお土産や謎の置物なども混ざっている。

椎名そうだったか。

竹田なんでか分からんけど、みんなが革靴、ジャケット、スニーカー、シェラカップあたりに殺到する中、ぼかあ、このエビが可愛くて。どこのエビなんですか?

椎名たぶん誰かのお土産なんだよなあ。海外からのお土産で重量感があるものは持ち運ぶの大変だからありがたみがある。

竹田どこのミヤゲですか?

椎名南米だな。

竹田適当だなあ。当時、椎名さんは「これはどんな瓶ビールの栓でも開けちゃうんだぞ」とか言ってて、僕も「おお、すげえ」とか返事してたけど、酔ってたんでしょうね。よく考えると普通のことなんすよ。

椎名ははは。

竹田この前、産業編集センターから『机の上の動物園』が出ましたけれど、あそこにも入ってなかった。

椎名だってあれは自分で買ったものだから。

竹田まあそうですね。

椎名自分で『屋根裏の水族館』という書籍を出せばいいじゃないか。エビの物語を書きなさい。

竹田エビのエピソード。

椎名ん?

竹田なんでもありません。でも『屋根裏の水族館』っていいタイトルですね。

椎名マンボウのコースターとか、アザラシの等身大枕とか、ハリセンボンのバスマットを集めるんだ。

竹田ハリセンボンのバスマットは痛そうですね。どこに売ってるんですか?

椎名南米だな。

竹田エビデンスあるんですか?

椎名ん?

竹田なんでもないです。あれ? よく考えたら『机の上の動物園』にはクジラもワニも載ってましたよ。なんでエビは入れてあげないんだ。

椎名この前、テレビで見たけどエビそばっていうラーメンがうまそうだった。今度、連れてってくれよ。町中華。

竹田おごってくれますか?

椎名いいよ、瓶ビールも飲んでいい。

竹田じゃあ、その瓶ビール、このエビで開けます。

椎名ほら役に立つじゃないか。

竹田言いくるめられているなあ。まあいいか。またなんかください。

椎名誠:最近は体調が良いのでカクヤスに毎日、注文をしている。肝臓の数値も悪くない。酒がうまい。

竹田聡一郎:医者に「休肝日を週2日作りなさい」と言われた。フルマラソン2時間台で走れと言われたに等しい。

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