182杯目:焚き火古今東西

IMG_0000

雑魚釣り隊有志でキャンプしてきた。隊長を誘ったけれど無視された。
富山県富山市/竹田聡一郎撮影
(“チェキ” instax mini 90 ネオクラシック)

竹田久しぶりにキャンプしてきました。

椎名どこで?

竹田恒例の富山ホタルイカキャンプです。ホタルイカはスーパーで買うに限ります。

椎名獲れなかったのか。まあでも、焚き火を囲んで酒を飲むだけで楽しいよな。

竹田その焚き火なんですけどね、昨今は事情も変わってきまして。

椎名どういうこと?

竹田今は多くのキャンプ場が直火禁止だったりします。

椎名焚き火できないってこと?

竹田いや、キャンプブームもあってなのか、焚き火台というものが一般的にも普及してきました。それを使うケースがほとんどですね。

椎名なんだそれは?

竹田その名の通り、その台の上で薪を燃やすのです。でっかい盃だったり、六角形だったり、長方形だったり、大きさや高さはいろいろですが、多くはステンレス製なのかな。以前、我々が海でやっていたような、地面に直に薪を組む焚き火は環境へのダメージや山火事などの危険があるとされ、マナー的にNGとされています。

椎名バカじゃないんだから枯れ草や芝生があるところは避けるよなあ。ダメージって言っても河原とか砂浜だぞ?

竹田僕も実はそこは問題ないと思っています。ただ、人によっては場所を考えずに小火を起こしたり、立ち木のそばで焚き火して木をダメにしたり、燃やしきれなかった薪をそのまま残したり、その燃えカスを処理しないケースも多いんでしょう。富山で焚き火をしていたら警察官に注意されたこともありました。

椎名その焚き火台とやらを使っていても?

竹田使っていました。水の入ったポリタンクも準備していました。もちろん燃えカスも持ち帰って処分しています。でも警官は「危ないから」って。警官はあまり野営やキャンプをしたことないんでしょうねえ。

椎名日本はあくまで焚き火はレジャーの範疇にあるからなあ。

竹田今はアウトドアグッズもたくさんあるから焚き火がないと料理できないというわけでもないですしね。

椎名海外は生活の手段として焚き火をすることが多い。暖をとって火を使わないと生死に関わるしメシも食えない。危ないかどうかはそもそも論点ではない。

竹田椎名さんの作品でも、アルゼンチン、チリあたりの旅では羊の丸焼きが登場します。

椎名ブリキのカップにどぼどぼ注ぐ赤ワインがうまいんだ。

竹田最近でいえば『この道をどこまでも行くんだ』(新日本出版社)に載っていましたが、ドラム缶を縦に割ってそこで火を起こす。あれも立派な焚き火台ですもんね。

椎名そう言われたらそうだねえ。

竹田話を国内に戻します。焚き火台を使っているとはいえ、我々は外からお邪魔している身ですので、地元の方の言うことを聞いて消火してさっさと寝ましたけれど、釈然とはしなかった。

椎名整備されたキャンプ場に行って金を払って指定された場所と時間と方法でやる。それが現代日本の焚き火とキャンプなのか。結局、ああしろこうしろと言われるのが好きなのかもしれないなあ。

竹田ううむ。キャンプには「自然と触れ合う」的な楽しさも含まれていた気がするのですが。まあ、残念ながらマナーの劣化がいちばんの理由なのかもしれません。バーベキューして道具やゴミをそっくり放置して帰る集団を見たことがあります。ああいうのがいると地元の方も警察も寛容にはなれないでしょうね。

椎名ニューギニアの島ではバナナの葉にサメ肉をくるんで焚き火に放り込んでいた。向こうではそれが一般的な調理方法らしく、うまかった。「危ないから」という曖昧な基準でなんでもかんでも禁止すると失うものもある。

竹田
おれたちを齧るな!わしらは怪しい雑魚釣り隊』(小学館)でバリ島に行った時も宴会の焚き火料理では、ココナッツの殻が薪でしたね。それを薪にしていて単純な我々は「なんだかこの蒸し焼き、甘い香りがして妙にうまい!」と大騒ぎしました。

椎名ココナッツはもともと天然の油を含んでいるし、気候的にも常に暑い場所にあるから殻は乾燥していてよく燃える。燃料になるわけだからゴミにもならない。そういうことを通して実体験で学ぶことはたくさんあるよな。日本でも松ぼっくりは焚き付けとして優秀というのは野営する人の中では常識だ。ちゃんと自然があるのに、フィールドワークという意味では日本はだいぶ後進国と聞いたことがある。

竹田椎名さんの好きな無人島サバイバル系や漂流モノでいえば、日本人は弱いかもしれませんね。

椎名ニュージーランド、カナダ、ノルウェーあたりは強そうだなあ。海の上であれば東南アジアの島国の人々もサバイバル能力に長けていそうだ。

竹田キャンプ、好きなんだけどなあ。流行になると縛りが多くなる社会はなんとかならんですかねえ。

椎名誠:酒が好きな作家。暑い時はまず生ビール飲んで、2杯目は黒ビールとのハーフ&ハーフだ。

竹田聡一郎:酒が好きなフリーライター。鯉のぼりの季節なので今のうちにたくさん飲んでおく。

<<<181杯目    183杯目>>>

旅する文学館 ホームへ