179杯目:11と22
南の島のだらけた猫
台湾・台東市/椎名誠撮影
(NIKON Df)
竹田お、どこの猫ですか?
椎名台湾の田舎のほうの市場かな。
竹田2月22日は猫の日だそうです。
椎名なんで?
竹田にゃんにゃんにゃん。
椎名わあ、恥ずかしい。
竹田犬の日もあります。
椎名まさか1月1日か?
竹田惜しい。11月1日です。
椎名犬は好きだが、嘆かわしい。誰が決めたの?
竹田ペットフード工業会、現在のペットフード協会らしいです。
椎名商業的なニオイがするな。チョコレートのやつと一緒。
竹田ああ、バレンタインですね。「愛犬の日」というのもあって、誠文堂新光社の雑誌「愛犬の友」がイベントを5月13日に開催したことから同日がそうなったようです。忠犬ハチ公の日が4月8日。アメリカでは8月26日がナショナルドッグデー
椎名どれも人間の勝手な都合だ。
竹田この写真も含めて、椎名さんの撮る馬や犬、猫はどれも幸せそうだったりカッコ良かったりしますよね。
椎名動物は好きだからな。これは紐がついているけれど、犬だったらうろうろ歩き回っている姿のほうが好きだ。
竹田愛ですね。
椎名そうなのか?
竹田『犬から聞いた話をしよう』(新潮社)という写真集があるくらいだから、椎名さんって猫より犬好きだと勝手に決めつけていましたが、『猫殺し その他の短篇』(文藝春秋)、赤マントシリーズのエッセイ『ネコの亡命』(同)、短編集『ニューヨークからきた猫たち』(朝日新聞社)など、猫作品が意外とありました。
椎名猫も好きだよ。でも犬のほうが好きかな。
竹田馬や猫の写文集はないのでぜひ出してほしい。
椎名馬はけっこう写真材料はあるかもしれない。
竹田さっき挙げた『ニューヨークからきた猫たち』を久しぶりに読み返したのですが、『岳物語』(集英社)とその後に同社から出る『家族のあしあと』シリーズをつなぐ橋のような私小説ですね。
椎名そうかもしれないな。
竹田慌ただしい父親の姿が読めるのですが、静かな日々のように感じるのはどうしてだろう。
椎名意外と深く穏やかに思考しているのです、私は。
竹田朝日文庫から出た文庫解説は、翻訳家の羽田詩津子さんが寄せてくれているんです。その中で「エッセイは赤裸々に書いているようで意外とベールをかけているけれど、かえって小説のほうが本音が出てしまう」という旨の話を椎名さんがしてくれた、と書いています。
椎名ふうん。覚えてないけれど、それは事実だね。
竹田作中の一編「遡行」には珍しく妻に「ありがとう」という登場人物、つまり椎名さんがいます。
椎名そうだっけ。
竹田実生活でなかなか口に出せない、妻へのお礼を書いたという解釈もできるんですね。いや、そうに違いない!
椎名ニヤニヤすんなよ。でもその解説は読みたいな。持ってきてくれよ。
竹田事務所にあるでしょう。
椎名たくさん本があるから探せない。
竹田もう! わかりました。手配します。あと羽田さんは「いちばん苦しかった時期の私小説集ということになるだろう」とも指摘しています。
椎名そうかもなあ。
竹田本当は犬と猫の作品を挙げて比較しようと思ったのですが、羽田さんの名文のおかげで猫だけで掘れてしまった。羽田さん、ありがとうございます。
椎名 犬の本もたくさんあるの?
竹田冒頭で触れた『犬から聞いた話をしよう』の他にも『犬の系譜』(講談社)、『街角で笑う犬』(朝日新聞社)や『南洋犬座』(集英社)はアサヒカメラがらみですね。あとは『チベットのラッパ犬』(文藝春秋)、『ジョン万作の逃亡』(角川書店)も犬がらみといえば当該します。映画『ガクの冒険』もあります。
椎名ひええ。
竹田他にもあるかな、探しておきます。
椎名誠:酒が好きな作家。暑い時はまず生ビール飲んで、2杯目は黒ビールとのハーフ&ハーフだ。
竹田聡一郎:酒が好きなフリーライター。鯉のぼりの季節なので今のうちにたくさん飲んでおく。