177杯目:カナダ両極端

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春だというのにまだまだ寒かった
カナダ・レジャイナ/竹田聡一郎撮影
(カメラ:SONY/レンズ:TAMRON)

椎名ここどこ?

竹田ふふふ、どこでしょう。

椎名日本ではないだろうな。これ何時くらい?

竹田午前中です。10時くらいだったかな。

椎名南米ではなさそうだ。ヨーロッパ?

竹田どうして南米ではないと感じたのですか?

椎名南米は赤土の場所も多いし、空はくっきりともっと青い気がする。

竹田へえー。

椎名どこなんだ?

竹田カナダです。カナダのサスカチュワン州です。大雑把にいうとカナダの真ん中あたり。

椎名ふうん。行ったことないな。

竹田椎名さんは『極北の狩人 アラスカ、カナダ、ロシアの北極圏をいく』(講談社)でカナダに行っていますが、なんせタイトルにもあるように極北への旅なんですよね。バフィン島とか。

椎名懐かしいなあ。

竹田バフィン島ってグリーンランドの一部だと思っていました。

椎名れっきとしたカナダの島です。イヌイットの故郷。

竹田有意義な取材だなあ。

椎名でも、大自然の中に身を置いていると、取材もかなり天候に左右されるからうまくいかないことも多かった。

竹田作中で流氷との付き合い方、カリブーのカレー、白熊監獄などなど、極北ならではの生活や知識が読めますよね。

椎名白熊なめんなよな。

竹田別になめてないっす。僕はカーリング取材なので、どうしても人口の多い今回のサスカチュワン州や、アルバータ州とかブリティッシュコロンビア州とかオンタリオ州など、都市部に行くことが多いです。

椎名そうだろうな。カナダの人口って位置的にかなり偏っているはずだ。

竹田国土の南部、特にアメリカとの国境から200km圏内に人口の80%が住んでいるそうです。

椎名気候や経済を考えるとそうなるよな。

竹田ユーコンテリトリーとか行ったことないですね。行ってみたい。この写真の場所も空も道も広いなあ、とか思っていましたが、東西に100kmほど走ればちゃんと街はある。

椎名逆に俺はカナダの街に行ったことないかもしれない。

竹田おお、そうなんですね。バンクーバーもトロントも?

椎名トランジットで降りたことはあるけれど、滞在したことはないと思う。だから君がいつもバンクーバーで「生ビール飲んだんですう」とかアホみたいに騒いでいると、それはそれで羨ましい。

竹田なるほど。極北とは世界の作りが真逆ですもんね。それよりも、僕はそんなにアホみたいですか?

椎名バフィン島は隣の村まで300kmとか平気であるからな。

竹田無視しないでください。

椎名ガソリンが間違いなく足りなくなるのでスノーモービルは使えない。犬ぞりがもっとも実用的なんだが、1週間以上かかる。

竹田ううむ。カルガリーに滞在してブリュワリーで飲みカジノで散財し歩いてホテルに帰る日もあったというのに、バフィン島と同じ国とは思えない。

椎名国土的に大国であればあるほど、落差はあるだろう。ロシアも中国もブラジルも。

竹田そうですねえ。

椎名今もカナダのハブ空港はバンクーバーなの?

竹田日本からの直行便はバンクーバー、カルガリー、トロント、モントリオールです。

椎名いろいろあるんだねえ。

竹田そういや、新潮社の『蚊』の一編をバンクーバーへの機内で書いたというのは本当ですか?

椎名ああ、そうだそうだ。よく知ってるなあ。

竹田目黒さんに教えてもらいました。パソコンならまだしも「機内で手書きでよく書くよなあ」と呆れてました。

椎名確か航空会社の人に原稿を渡して日本に持って帰ってもらった。

竹田そんなことしていいんですか?

椎名たぶんダメ。よく「他人から預かった荷物はありませんか?」とか税関で聞かれるもんな。でも出版社がうまく話をつけたんだと思う。

竹田昔は写真もフィルムだったから、カメラマンも日本への帰国便に乗る人にアルバイトとして預けた、なんてエピソードを聞いたことがあります。

椎名不便だけど、あとで聞くと面白い話だよなあ。

椎名誠:旅と酒と映画と寅さんが好きな作家。春になったのでのそのそと新宿に出かけてハイボールを飲む。

竹田聡一郎:旅とビールとカープが好きなライター。春だからとことこと出張しては散歩してビールを飲む。

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