175杯目:ぜんぶ気圧のせいだ

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最近はどの空も航路になってしまったなあ
埼玉県さいたま市/竹田聡一郎撮影
(“チェキ” instax mini 8)

椎名君は出張とかはエコノミークラスに乗るんだよな?

竹田当たり前じゃないすか。ビジネスクラスなど値段すら知らないっす。一度だけバンクーバーからの帰国便が満席でビジネス振り替えてもらったラッキーがありましたが、メシと酒はエコノミーと同じでした。

椎名でも足を伸ばせるだけでだいぶラクだよな。

竹田そうそう。おかげさまでぐっすり眠れて、あっという間に成田に着いたのですが、なんかもっと堪能すれば良かったなと妙な気分になりました。

椎名わかるよ。

竹田まさか椎名さんは海外出張はビジネスですか?

椎名そんなことないよ。でも傾向としてテレビの仕事で行くと乗せてくれることが多かった。

竹田なるほど。椎名さんの場合、タレント兼文化人みたいな扱いですもんね。でも、僕は椎名さんと海外に行ったのは、アジア圏かなあ。我々は一緒にエコノミー乗りましたよね。

椎名安いやつなんだっけ、MRIみたいなやつものった。

竹田なんで機内で検査するんすか。LCCです。まあ、それくらい狭かったですが。

椎名あれはどこ行った時?

竹田台湾ですね。『さらばあやしい探検隊 台湾ニワトリ島乱入』(KADOKAWA)で、成田から高雄に飛んで台東へ。

椎名面白かったなあ。

竹田あの時乗ったバニラエアはピーチと統合されてしまいました。

椎名ふーん。

竹田そういや、『世界おしかけ武者修行 海浜棒球始末記 その弐』(文藝春秋)でパプアニューギニアに行った時の裏話なんですけど。

椎名なんだい。

竹田航空会社なのか観光局なのか代理店なのか定かではありませんが「椎名先生はビジネスにどうぞ」と言ってくれたらしいんですよ。

椎名覚えていない。

竹田その時は浮き球野球のメンバーも一緒だったのかな。おそらくそのほとんどが自腹で参加していたんですよ。椎名さんが担当者に「ありがたいですが、僕はみんなと一緒にエコノミーでいいので、そのぶんなるべく彼らの負担を減らしてやってほしい」とおっしゃったと。さすが俺たちのシーナ兄貴だ、というエピソードがありまして。

椎名いい話っぽいが、まったく覚えていない。

竹田僕だったら自分で喧伝します。

椎名しそうだな。まあ、昔は身体ももうちょっと動いたから少しくらいの移動は我慢できたのかもな。

竹田秋に那覇に行ったじゃないすか。

椎名久しぶりに飛行機に乗った。

竹田空港に着くや「赤ワイン飲んだ。2杯」って嬉しそうに自慢してました。プレミアムクラスだったんですね。羨ましい。

椎名うまかった。2杯で止めたあたり、私も大人になりました。ワイン飲んで本を読んでいたら少し眠れたので、理想的な移動だったな。

竹田シーナさん移動時がいちばん熟睡できる説は強いかもしれない。僕もビジネスだかプレミアムだか乗って飲み放題したいっす。

椎名あれって飲み放題なの?

竹田だって制限ないでしょう? どんな居酒屋だって最大3時間くらいの飲み放題ですが、欧州便なら14時間飲み放題ですねえ。うひゃひゃひゃ。

椎名アホや。

竹田でも、機内で飲むと酔っ払う気がします。

椎名気圧の関係らしいぞ。

竹田お腹が張る感じもします。

椎名気圧だな。

竹田肩も凝るんですよね。

椎名気圧。

竹田ぜんぶ気圧のせいですね。だから原稿も捗らない。

椎名それは君の怠慢だ。まとまって本を読みたい時とか国際線はちょうど良いじゃないか。

竹田集中力が続かないんです。もう観た映画を変な日本語吹き替えで見てしまう。

椎名吹き替え問題は根深いよな。刑事コロンボとかは見事なんだけど、街のチンピラ役が「てめえ、なめやがって!」とかいう安いセリフを下手な抑揚で言うと冷める時がある。映画吹き替え問題は改めて語ろうじゃないか。

竹田いいですけれど、話がすごい脱線しましたね。

椎名気圧だな。

椎名誠:旅と酒と映画と寅さんが好きな作家。春になったのでのそのそと新宿に出かけてハイボールを飲む。

竹田聡一郎:旅とビールとカープが好きなライター。春だからとことこと出張しては散歩してビールを飲む。

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