168杯目:眠れない一句詠んだらいいではないか

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火の見櫓は不眠症のヒトは役に立ちそうだなあ
岩手県盛岡市/椎名誠撮影
(NIKON Df)

竹田腰の調子はいかがですか?

椎名痛い。

竹田ううむ。しっかり眠れてます?

椎名あまり眠れない。BSでいい映画がやっていると夜中まで見てしまう。

竹田ううむ。新潮新書の『ぼくは眠れない』を読んでいると心配になります。

椎名最近は眠れず腰が痛いというのがセットで襲ってくるんだ。

竹田僕は枕を変えてみたんですが、よく眠れるようになりました。

椎名君は木偶や独活のように鈍感なヒトだと思っていたが、不眠なのか?

竹田いえ、まったく。グースカ寝ます。仕事で家具屋さんを取材したら枕をオススメされ、よりグースカ眠れるようになった、という話です。

椎名なんだそれは。睡魔よこせ。

竹田睡魔よこせ、って面白いフレーズですね。

椎名枕は何度か試したけれど、どれもあんまり変わらなかったなあ。

竹田でも椎名さんって、移動中は眠っていることもあるし、民宿などで布団が畳んである小山に寄りかかりつつ変な体勢で寝てたりしますよね。スポーツ新聞を枕にして炎天下で昼寝してるのも見たことあります。

椎名移動中だけはよく眠れるんだ。でも、そういう時は前の日に眠れなかったんだと思う。

竹田だいたい何時間連続で眠れたら十分ですか?

椎名映画を撮っていた頃は2日くらい寝てないなんてしょっちゅうで、その後に14時間連続睡眠とかそういうことはあったけれど、もう連続ではそんなに眠れないんじゃないかな。6時間などと贅沢は言わない。4時間一定して眠れたら我が身も楽になる気がする。

竹田東京ー博多間が新幹線で5時間なんですよ。

椎名なんだよ、急に。

竹田博多にアパートを借りて新幹線の定期を買って、眠りたくなったら新幹線に乗る。そんな暮らしはどうですかね? 終点だから乗り過ごしもない。

椎名バカげているな。でも新幹線は考え事もできるなあ。

竹田ところで枕って、意外と多くの慣用句などがあるんですよね。

椎名例えば?

竹田その家具屋さんで広報の女性スタッフに取材していたんですけれど、紹介された枕が薄いタイプだったんで「枕は重ねても大丈夫ですかね?」と質問したんです。

椎名「枕を重ねる」って、いわゆる男女のことだろう?

竹田そうなんです。「枕を交わす」なんて言い方もするようですね。僕の無知ゆえの失言なんですけれど後で気づいて、でも先方がそれに気づいているかどうかも分からないので、改めて謝るべきかどうかの判断も難しくて。

椎名ははは。枕は睡眠はもちろん、男女や病気、神託なんかの言葉でもあるからね。意外と使い方が広い。

竹田枕営業なんて夜の世界ではかなり使われてますもんね。

椎名枕詞とか落語とかもっとブンガク的なものを覚えるべきだ。

竹田話が逸れるかもしれませんが、筒井康隆さんが「せろにあす」を「文句」の枕詞だと指摘した文章を昔、読みました。

椎名意味がわからない。

竹田ピアニストのセロニアス・モンクとかけているようです。

椎名あー、なるほど。面白い。

竹田作家ってやっぱりすごい発想するんだな、と感心したのを覚えています。

椎名詩の中では、枕詞は5音であれば本来の意味を失っても良いという見識があるようだ。

竹田では「シーナさん」だと、どうかかるんだろう。小説や映画関連かやっぱり酒か、はたまた暴力か。ちょっと考えておきます。

椎名考えないでよろしい。さっさと寝なさい。

椎名誠:バカ旅酒作家。腰痛と冬季鬱で少し停滞気味。春よ来い。

竹田聡一郎:ビール命のフリーライター。春は来てもいいが花粉は飛ぶな。

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