167杯目:三陸ウニホヤマグロ目玉恋慕
でっかい堤防ができていた
岩手県陸前高田市/竹田聡一郎撮影
(“チェキ” instax mini 90 ネオクラシック)
椎名これどこ?
竹田昨夏、久しぶりに陸前高田に行ってきたんですよ。
椎名なんで?
竹田僕は鉄道好きなんですが、三陸鉄道に乗ったことがなかったのでガタゴト揺られてきました。陸前高田に寄らないわけにはいかない。
椎名ひげマスや和尚は元気?
竹田お元気でした。久しぶりに痛飲できて楽しかったっす。
椎名「俺っ家」はどうなってるの?
竹田リニューアルして、釣り具屋兼宴会場兼カウンター居酒屋に進化していました。カウンター右端は和尚の定位置ですわ。
椎名ははは。元気なんだな。
竹田椎名さんに会いたがっていましたよ。陸前高田と椎名さんの馴れ初めというか、つながりをハッキリ知らなかったので改めて聞きました。あの人たち、椎名さん大好きなんですね。
椎名最初は映画関連?
竹田自分のことなのに忘れている。椎名さんを大好きな「俺っ家」のヒゲのマスター、“ひげマス”こと熊谷浩昭さんと、浄土寺の住職“和尚”こと菅原瑞秋さんら、三陸の愉快な仲間たちは「なんでかんで隊」という組織を結成してキャンプ旅などをしていたそうなんです。
椎名いやはや隊みたいなもんか。
竹田「あんな有名な作家がバカみたいに遊べるっていいよなあ」という憧れなのか呆れなのか、そのあたりが結成の理由だそうです。
椎名そういう感想はよく言われるんだ。しかし、「バカみたいとはなんだ」と怒り出すべきなのか「どうもありがとう」とお礼を言うべきなのか、いまだによくわからない。
竹田その「なんでかんで隊」と椎名さんのファーストコンタクトは椎名監督時代です。映画『 白い馬』の上映会をするために16ミリのフィルムの貸し出しをしていたそうなんです。
椎名おお、やってたねー。世の中にはけっこう物好きがいて、各地で上映会が開催されたと聞いた。
竹田その物好きが彼らであって、各地のひとつが陸前高田だったんですね。
椎名そうだったかあ。
竹田それから何年かしてひげマスと和尚のコンビが椎名さんに改めて会い「その節はありがとうございました。次はぜひ高田で講演会を。宴会ではウニホヤマグロ……」「やりましょう!」というアウトラインかと。
椎名なんだか俺がウニホヤマグロにあっさり釣られたヒトみたいじゃないか。
竹田実際、そうなんだから仕方ない。
椎名まあな。三陸の海は豊かだよなあ。そのぶん震災の時は悲しかったなあ。
竹田高田松原には再びたくさんの松が植えられていて、今はチビ松原だけど可愛いですよ。
椎名そうかあ。復興って言葉は好きじゃないけれど、また違う感覚であの街に行くのもいいなあ。
竹田ぜひ行きましょう。
椎名何食べたんだよ?
竹田分厚いカツオ、コリコリのホルモン、旬の秋刀魚でえす。酒はもちろん酔仙!
椎名ずるいぞ。
竹田それはこっちのセリフでして、あなた前述の講演後に暴飲暴食していたそうじゃないですか。マグロカブトを炭火の上に10個並べた宴会をしたら、椎名さんは「目玉がうめえんだ」と目玉をモリモリ食べていたらしい。ほとんど妖怪だ。
椎名ははは。そんなことは覚えてないけれど、あのふたりもそうだけど、陸前高田の人々はみんな身体がでっかくて迫力がある。だからかどうかは知らないが、酒も肴もどーんとスケールが大きい。よく飲む気持ちいいヤツらで、いい土地なんだ。
竹田行きましょう! マグロカブト焼き食べたいっす。
椎名目玉はあげないよ。
椎名誠:バカ旅酒作家。腰痛と冬季鬱で少し停滞気味。春よ来い。
竹田聡一郎:ビール命のフリーライター。春は来てもいいが花粉は飛ぶな。