163杯目:乾杯願望。
この人たちのように健やかに暮らしたい
2006年チベットのどこか/椎名誠撮影
(Canon EOS 5D)
竹田あけましておめでとうございます。
椎名おめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
竹田お正月、何してましたか?
椎名年末からいろいろあったけど、年始は静かな日々でした。君は何してたの?
竹田実家への挨拶、箱根駅伝観戦、栗きんとんにお屠蘇で二日酔い、トクヤさんと初打ち。
椎名例年どおりか。
竹田そうですね。例年通りといえば、年末に掃除していると過去のシーナ本が出てくるわけです。
椎名何が出てきた?
竹田『地球どこでも不思議旅』(小学館)の集英社文庫のほうです。
椎名Pタカハシとの「週刊ポスト」の連載?
竹田そうですそうです。メキシコや敦煌といったでっけえスケールの紀行も面白いのですが、国内編の「京都スーパー・スペシャルー・ゴールデン・デラックスコースを歩いてしまったのだ」が、とにかくひどい。
椎名ひどいとはひどい。
竹田だってひどいんです。見出しを並べてみるだけでもひどい。「ウスラ嫌いの京都なのだ」にはじまって、「毒キノコ的京都タワー」、「恥ずかし悲しキンカクジ」と続きます。
椎名ひどいな。
竹田でしょう。さらに「八ツ橋をうまいと思う奴前に出ろ!」、「態度がでかいぞ平安神宮め」と、もうケチョンケチョンです。今なら炎上モノっすね。
椎名ははは。
竹田でもこれね、割と評判が良いんですよ。某新橋の巨大代理店の営業マンに聞いたのですが「京都というのは綺麗なプロモーションをしすぎるきらいがあって、椎名さんの筆致はそこに一石どころか、隕石衝突くらいのインパクトを与えてくれた」と。
椎名そうなのか。京都って個人的に相性が悪い街なんだよ。
竹田そのあたりをまっすぐ書いちゃうのが椎名さんらしくありますね。堅いほうの八ツ橋を「あれをかじるとなんだかお線香のまじった堅せんべいを食べたよう」と、生八ツ橋を「アンコ入り生八ツ橋など食えたものではない」と、それぞれバッサリですわ。
椎名我ながらひどいこと書くなあ。
竹田そして「しけたハバツ課長などにはあれを一箱与えておくのが一番無難なのだ」と締めくくっています。
椎名それくらいにしておいてくれ。
竹田いいじゃないすか。こういうのを書ける時代、それを面白がってくれる読者の存在は本当にうらやましい。
椎名確かになあ。出版や文学だけではないが、誰かの顔色や受け止める側の反応をうかがいながらの創作活動はしんどいだろうなあ。
竹田そうなんです。だから個人的には今年は恐れずに発言しようと思ってます。
椎名例えば。
竹田アホな政治家には「座ったまま挨拶するな」と。若者には「本を読め。匿名でモノを言うな。携帯ゲームとSNSは時間の無駄だぞ」と。老作家には「家で飲まないでもっと新宿に出てこい」と。
椎名はっきりモノが言えるのはいいことだ。ただ、こっちまで巻き込まないでくれ。
竹田今年もたくさん飲みましょうね。新宿と笹塚と神保町と宮古島と盛岡と名古屋と那覇と市原と小岩と国分寺と秦野と八丈島と広島と松本と横浜と金沢と八戸で。
椎名ずいぶん多いな。
竹田あと札幌と鹿児島とソウルと久留米と出雲と奥会津も。
椎名はいはい。
竹田あと、本の雑誌から久しぶりの新刊が春に出る予定だと聞いています。その出版イベントという名の宴会も企てましょう。今年も椎名さんと乾杯するのが楽しみで楽しみで。
椎名まあ、ぼちぼちやりましょう。
椎名誠:バカ旅酒作家。映画とウイスキーが好き。BSで寅さんがやっているとつい見てしまう。今年は腰痛が緩和するといいなあ。
竹田聡一郎:麦酒フリーライター。カーリングの日本選手権が2月に横浜で開催されるのでちょっと忙しい年始だ。みなさま横浜BUNTAIでお会いしましょう。