161杯目:国分寺の書店オババは不滅なのだ

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国分寺書店跡地はテナントを募集していた
東京都国分寺市/竹田聡一郎撮影
(カメラ:SONY/レンズ:TAMRON)

竹田おめでとうございますー。

椎名いつもめでたいのは君だろう。

竹田ありがとござまあす! 何がめでたいって、この秋で45周年なんです。『さらば国分寺書店のオババ』(情報センター出版局)は1979年11月16日に初版が出ています。つまり椎名誠という作家が生まれてちょうど45年が過ぎました!

椎名そうなんだってね。何人かに言われたよ。

竹田めでてえので行ってきました、国分寺書店。

椎名今はこんなふうなのか。

竹田オババの気配を感じた、とか言いたいところですが、別にピンとこなかったっす。

椎名そりゃそうだよ。でも、懐かしいなあ。

竹田国分寺ってあんまり行ったことないので、せっかくだから歩いてみたのですが、イメージよりも大きい駅と街でした。

椎名西武線だって走ってるんだからな。

竹田学生が多かった。学生街なんですね。

椎名正確には小平市だけれど、近所に一橋大学や津田塾大学がある。

竹田だから書店ないかなーと歩き回ってみたんですよ。そしたらいくつもあった。

椎名そうなのか。

竹田まず駅ビルには紀伊国屋書店。そして、オババのいた国分寺書店跡地は駅南口なんですが、そちら側には三石堂書店というこじんまりした店が。

椎名そうかそうか。なんだか嬉しい。

竹田さらにですね、国分寺書店跡地からもう少し進んだところに「まどそら堂」という古書店。さらに駅北側にはですね、喫茶店併設の「胡桃堂書店」、古き良き古本屋といった風情の「雲波」(うんぱ)、アートやカルチャー系の品揃えが強い「早春書店」、神保町にありそうな雰囲気の「七七舎」と、古書店がたくさん息づいていたのです。

椎名いいではないか!

竹田店ごとにそれぞれ個性と本への愛があってよかったです。僕は個人的には「雲波」が好きです。なんてったってオババがいましたから。

椎名えぇ!? 怒られたのか?

竹田いえいえ。失礼ながら「オババ」と勝手にお呼びしましたが、店頭には知的な淑女がいらっしゃって、「モーレツ的に優しいバアちゃん」でした。なんせ第一声が「ごゆっくりどうぞー」ですから。

椎名へええ。国分寺にも優しいオババはいるのか。

竹田優しいオババのお言葉に甘えて、1990年代の「暮らしの手帳」バックナンバーだったり、聞いたことない作家の面白そうなタイトルの文庫本だったり、何冊か購入しました。椎名さんの『あやしい探検隊 アフリカ乱入』(山と渓谷社)もありましたよ。久しぶりの古本屋巡り、堪能しました。

椎名あんなに楽しい娯楽は他にないよ。

竹田しかもですね、熊野神社通りに「おため酒や」という試飲のできる酒屋さんがあって、そこで日本酒を舐めながら戦利品をパラパラやるわけですよ。

椎名ハアハア。

竹田至福の時間でした。

椎名いいなあ。きっといい店でその優しいオババもいいヒトなんだろうけれど、俺はあの厳しいオババに会いたい気もするんだ。

竹田そうかあ。ある意味では作家の卵の椎名さんを育ててくれたわけですもんね。

椎名そんな大袈裟なもんではないけれど、現代にはオババの鋭い眼光がもっとあってもいいと思うんだ。

竹田またゆっくり国分寺古書巡りしたいです。一緒に行きましょうよ。

椎名うまい居酒屋も探しておいてくれよ。

椎名誠:酒呑み作家。デビュー作『さらば国分寺書店のオババ』(情報センター出版局)出版から45年が経った。著作は300冊を超える。

竹田聡一郎:麦酒フリーライター。デビュー作『BBB』(講談社)出版からまだ14年しか経っていない。著作はたった2冊。次作の噂さえない。

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