160杯目:2024師走、シーナさんに質問だ!
雪が降る丘
2014年、アイスランド・スナイフェルス/椎名誠撮影
(NIKON Df)
竹田ねっんまっつだから、あー!
椎名どうした?
竹田奥田民生の名曲「雪が降る町」じゃないすか。
椎名歌ってたのか。何やら唸っているのかと思った。
竹田年末だから、恒例のシーナ読者からの質問です。
椎名なんでも聞いてください。
竹田焼津市在住の50代男性「田酒ひやおろし」さんより。「椎名さんはあれだけキャンプをしているのにバーベキューをしている場面を読んだことがない気がします。ひょっとしてバーベキューはお嫌いなんでしょうか?」と。
椎名嫌い。
竹田お、きっぱりしてますね。それはなぜ?
椎名外に出たから肉を焼くってあまりに安直だろう。
竹田え、理由はそれだけですか?
椎名もうちょっと説明するなら、バーベキューになると妙に興奮状態になる人がいたり、若い男女が大騒ぎしていてうるさい。
竹田なるほど。バーベキューは楽しいけれど、バーベキューやってるぜ! という事実に満足して、結局、何を食べたか、どんな話をしたかなんて覚えていないことはよくありますね。
椎名あと昔はよくテレビCMで、マイカーで海だか山だかに家族で出かけてお父さんが似合わないアウトドアベスト着て肉を焼く、なんていうお決まりのシチュエーションがあった。ケッと思って冷ややかに見ていた。
竹田でも椎名さんは八丈島ではヤギ肉宴会をしたり、パタゴニアでは焚き火でラムチョップを焼いたりしています。それもバーベキューと言えなくもない。
椎名あれは焚き火を活用して漁師だったりガウチョ(南米のカウボーイ)だったり、プロがやってくれることだから、ワーキャー嬌声バーベキューなんかと一緒にしてほしくないなあ。
竹田ではまとめると「嫌い。でもプロがやってくれる焚き火や炭火焼きは美味しい」ということですね。続いての質問は、東京都内にお住まいの30代男性「飯田飯男」さんから。
椎名はいはい。
竹田「子供が産まれました。長男です。椎名さんのように冒険、とまでは言いませんが、世の中を広く見る子にはなってほしいと願っています。でも今はさとり世代、Z世代と括られる若い人は現実的で冒険や旅行に対し冷めているように感じます。子育ての鍵はどこにありますか?」という質問です。
椎名難しいこと聞くねえ。まずはおめでとうございます。
竹田おめでとうございます。確かに難しい。旅行離れなんて言われていますしね。
椎名でも旅はどこへ行くかではなく何を見るかだから、極端な話、いつもと違う公園に遊びに行ってみるだけでも、旅や非日常ではある。こっちの公園が滑り台が大きくて楽しい。あっちの公園はガキ大将がいるから気をつけろ。そうやって自分なりの情報を集めながら行動半径をどんどん広げていくだけでいいんじゃないのかな。
竹田『幕張少年マサイ族』(東京新聞)に描かれている椎名少年は川下り、決闘、海の家侵入などなど、だいぶ型破りな幼少時代を過ごしていました。
椎名現代だと、良い子はマネすんなと言わざるを得ないんだろうな。
竹田そうなんでしょうけれど、そこから得るものも多いでしょうね。楽しそうだし。そして「もっと遠くへ」「なんか面白いことを」というのは椎名誠の原点なのでは。
椎名いいこと言うじゃないか。ギネスをお歳暮でもらったから飲んでいいよ。
竹田いただきます。この方の質問にちゃんと答えると「近場でいいから旅をしよう」と。
椎名あとは親がその姿勢を見せることは鍵かもしれないなあ。
竹田どういうことですか?
椎名どこに行くんだとしても、そこで目や耳や鼻や舌でたくさんのものを感じないといけない。だからスマホは使わない。
竹田なるほど。大人の我々でも例えば知らない街を歩く時にスマホの地図は便利なんですけれど、時間が経つと道も街の印象も覚えてなかったりする。生きた情報とはいいにくいです。
椎名そういうことだね。
竹田最後は宮城県在住の60代女性「わかめしゃぶしゃぶ」さんより。「秋に盛岡でのトークショーが中止になって残念でした。体調不良とのことでしたが、お元気ですか?」ですって。
椎名その節はご迷惑をおかけしました。
竹田僕のところにも数名から「椎名さん大丈夫?」と連絡ありました。
椎名前の週からずっと腰が痛かったんだよ。
竹田松本での講演では車椅子で移動してましたからね。
椎名歩くのが辛かったので、翌週の盛岡は延期してもらったんだ。申し訳ない。
竹田その後はいかがですか?
椎名劇的に改善はしていないなあ。元気です、とは大声で言えないけれど、原稿を書いたり酒を飲んだりはしているよ。
竹田この方もそうなのかもしれませんが、「講演が延期とかになってもこの『最近のシーナ』が週明けにアップされていると安心します」というお声もいただきました。これからも地味ながら椎名さんの近況をお伝えできれば、と考えています。
椎名よろしく頼みます。
椎名誠:酒呑み作家。デビュー作『 さらば国分寺書店のオババ 』(情報センター出版局)出版から45年が経った。著作は300冊を超える。
竹田聡一郎:麦酒フリーライター。デビュー作『BBB』(講談社)出版からまだ14年しか経っていない。著作はたった2冊。次作の噂さえない。