158杯目:ジビエが喰いたきゃ旅に出ろ

IMG_5205

こういうなんだか分からないものでも食べてみる人生だった
東京都中野区/椎名誠撮影
(“チェキ” instax mini 90 ネオクラシック)

竹田近所にジビエを扱う飲食店ができたので行ってみたら、高いだけでした。

椎名ブームと聞いたぞ。ケッ。

竹田違和感ありますか?

椎名保守的な日本人が獣肉を勝手な解釈で流行にしてるだけだ。

竹田そもそも「ジビエ」とは狩猟で獲った天然野生鳥獣の食肉を指すフランス語です。

椎名日本だと熊や鹿、猪あたり?

竹田そのあたりですね。椎名さん率いるアホおじさんたちは『 あやしい探検隊 焚火発見伝』(小学館)で、リンさんこと林政明さんが手がけたタヌキ汁を食べてます。

椎名あれはリンさんとの共著かな。美味しいというより楽しかったな。

竹田食にまつわるシーナエッセイのファンも多いかもしれませんが、『 みんな元氣だ わたしが見てきた野生動物』(文化出版局)や、最近では『 おなかがすいたハラペコだ。』(新日本出版社)では、グロキャッチーな「ワニは背開き」というフレーズが登場します。

椎名そうそう。けっこう簡単なんだよ。

竹田食欲湧かなそうっす。

椎名鶏肉みたいで美味しいよ。結局、住んでる地域の生態系が違うだけでトナカイだってヘラジカだってヌートリアだってジビエだよ。

竹田そういや南アフリカでシマウマのソーセージを食べました。

椎名うまかった?

竹田スパイスが効いていたので、肉そのものの味はよく分かりませんでしたわ。

椎名スパイス効かせる時点でクセはあるのかもな。

竹田他にもオーストラリアにはカンガルーのステーキがありますし、ちょっと話が逸れるかもしれないですが、韓国では今年、食肉のための犬の飼育や肉処理、流通を禁じる「犬食禁止法」が成立してました。

椎名賛否は抜きにしても、美味いと思っている人は禁止されても食うだろうな。

竹田我々にも鯨食文化がありますしね。

椎名ベジタリアンって今も一定数、いる?

竹田いるどころか、最近はヴィーガン、プラントベースなどスタイルも細分化されてきました。

椎名そうなのか。まあ絶滅の危機とかであれば世界で足並み揃えて考えないといけないだろうけれど、宗教上の理由とかもあるし、基本的に他人の食うモノに口出ししなければいいと思うんだけどな。

竹田本当にそうっす。

椎名だからいつも同じ結論になるんだけど、ジビエなんて現地で食べるから美味しいんじゃないのかな。

竹田というのは?

椎名例えば、カンガルーだろうとシマウマだろうと、日本に生息していない野生動物の肉を無理に取り寄せてそれっぽい味付けして食べてもコストだけかかって美味しくないんじゃないの?

竹田なるほど。ワインなんかにも共通するかもしれないですね。

椎名そうそう。日本国内でもエゾシカを食べるなら北海道がいいのでは。

竹田椎名さんがそう言うと説得力がありますね。そういや、渋谷に椎名さんが「日本の獣肉ではいちばん好きだ」と言っていた「幻のジビエ」こと穴熊のすき焼き専門店があったんですよ。

椎名ムジナ!

竹田残念ながら閉店してしまったようです。

椎名そうなのか、東京で食べられるのなら他に調べてくれよ。

竹田さっきと言っていることが違う! 穴熊は九州や四国に生息しているようなので行きましょうよ。

椎名寒いから嫌だ。私は犀門でお湯割りを飲みます。マグロを食べます。

竹田同じ穴ばかりにいる狢め。

椎名使い方が違うぞ。

椎名誠:酒呑み作家。最新刊『思えばたくさん吞んできた』(草思社)が好評発売中。

竹田聡一郎:ビール偏愛フリーライター。新幹線で思えばたくさん酔ってきたが、周囲には好評ではない。

<<<157杯目

旅する文学館 ホームへ