152杯目:シーナ絵の謎

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雑魚釣り隊20周年記念Tシャツ
東京都渋谷区/竹田聡一郎撮影
(カメラ:SONY/レンズ:TAMRON)

竹田椎名さんが登壇するトークショーやイベントなどに参加すると、僕らが持っているTシャツを着ていらっしゃっている人を見かけるんです。

椎名時々、いるよね。「いいの着てますね」とか冗談を言ったりするよ。

竹田雑魚釣り隊だけでも10周年と20周年でそれぞれTシャツ出してますからね。

椎名あれ、いくらで売ってたの?

竹田10周年が2000円、20周年が3000円。どちらもほぼ完売でした。

椎名ふーん、安いね。いいことだ。

竹田着てくれるのは嬉しいんですけれどね、この前、難しい質問をされまして。

椎名どうしたの?

竹田今回のこの写真、5月の「3丁目まつり」で販売した20周年記念Tシャツの背中なんですよ。

椎名うん、着たよ。

竹田椎名さんが『わしらは怪しい雑魚釣り隊』(マガジン・マガジン)にはじまる、雑魚釣り隊シリーズで描いてくれたイラストやキャラクターデザインです。

椎名うん、描いたよ。

竹田例えば、右下は10周年Tシャツのメインキャラだった「アホザコ君」です。

椎名そんな名前なの?

竹田あなたがつけた名前です。その左は釣り人、生ビールと由来が理解できるのですが、そっからイグアナみたいな生き物、クラゲ砲弾、四角顔マン、ヒゲ妖怪、今日の店番は豚。などと、ワケわからんキャラが続いてゆく。

椎名ははは。

竹田なに笑ってんすか。中段左の人は、どうやらワタクシおかしら竹田と、バラシのザコこと料理長の小迫剛。

椎名君の根拠なく偉そうな感じと、ザコの陽気な感じがいいだろう。

竹田上2段は、食材や雑魚釣り隊がらみのなんらか。という感じがするのですが、問題は中段のバラシのザコの右です。さっき挙げた「難しい質問」がそうなんですけれど、「これ、なんですか?」と聞かれました。

椎名なんだろうね。沖縄でいえば、なんでかねぇ。

竹田おお、責任放棄。本当にこれ、見れば見るほど意味わからんのです。雑魚釣り隊のライングループに「誰かこれがなんだかわかる人いるか?」と連絡してみたら「ダイイングメッセージ」とか「雨なのにタープに入れてもらえないドレイ」とか「公衆トイレ前の愛の告白」とか「おでん」なんていう意見がありました。

椎名面白いじゃないか。

竹田結局、これってなんなんですか。

椎名君はさ、愉快で優秀なヒトだと思うよ。

竹田ありがとうございます。なんすか、急に。

椎名欠点があるとすれば、優秀だけどバカなんだ。

竹田とんちですか?

椎名バカ真面目とも言うかもな。カチっとしすぎなんだ。

竹田意味がわからんです。

椎名結局、なんでもいいんだ。仮にこのイラストの正体をきっちり明かしたとこでそれが面白いのだろうか。誰か得をするのか?

竹田うぅーん、なるほど。想像の範疇や遊びの部分は残しておいてもいいのでは、と。

椎名そういうことだね。映画だってハッピーエンド、事件解決、謎解明だけが名作ではない。

竹田椎名さんの好きな『ブレードランナー』なんかもそうでしょうけれど、ワタクシも『ミスト』、『セブン』、『キューブ』、『インセプション』etc……。最後に観た側の解釈や、なんとも不気味なあるいは心地よい余白が残る作品が好きです。

椎名そういうことだ。

竹田なんかうまく丸めこまれた気がするな。でも、我々のTシャツのキャラはどうでもいいんですけれど、仕事でイラストを描かないといけない時に編集者に「これ何ですか?意味分からないから描き直しお願いします」とはならないですか?

椎名ならないよ。そもそもSFの挿絵とか、私小説の懐古シーンだったりするからね。「これ、不気味でワケ分からなくていいですねえ」と言ってくれる編集者のほうが多い。

竹田適当だなあ。怪しい絵の権威という意味では沢野ひとし画伯の画風についてはどう考えているんですか?

椎名彼は今も昔もブキミ絵を描いているけれど、完全にプロになっているからね。嬉しいコトです。

竹田椎名さん、木村さん、沢野さん、目黒さん共著の『沢野絵の謎』(本の雑誌社)をまた読んでみます。

椎名イラストも奥深いのだ。沢野絵がどうだかは知らないが。

竹田ちょっとそのあたり、シーナ作品に合う画風みたいのを沢野さんがどこまで意識しているのか、インタビューしたいですね。

椎名そうか、気をつけて行ってきてくれ。

椎名誠:バカ旅サケ作家。名古屋場所が面白かったからビールがうまい。九州場所も楽しみだ。

竹田聡一郎:フリーライター。カープの歴史的失速に落胆したので旅に出ます。CSもNSも見ない。

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