148杯目:若鷹影が人体です
AI小説は机さえも不要になるのか
東京都中野区/椎名誠撮影
(“チェキ” instax mini 90 ネオクラシック)
竹田先週のAIの続きなんですけれどね。
椎名ふんふん。
竹田仕事がらテープ起こしを多くするわけですよ。
椎名昔は俺もよくやったよ。
竹田念のために説明をはさむと「テープ起こし」とは、取材時などに音声記録をしてそれをテキストにする作業です。もちろん現在は音声データだけれど、昔は“テレコ”ことテープレコーダーでやっていたから、その名残で今も「テープ起こし」と呼ぶ。
椎名俺の頃は本当にテープレコーダーだった。カセットテープ。
竹田巻き戻しとか大変そうですね。
椎名今はスマホでできるんだろ?
竹田その通りです。僕がライターの仕事を始めた頃は、ボイスレコーダーやICレコーダーが主流でしたが、スマホの隆盛で最近は見かけなくなりましたね。
椎名そうだろうなあ。
竹田それがさらに進みまして、文字起こしアプリや音声自動文字起こしツールなるものが増えたんです。
椎名何それ?
竹田簡単に言うと音を聞かせると、それを文字にしてくれる。インタビュー音声は当然ながら、会議の議事録なんかも。
椎名ひええ。
竹田さらに英語の歌などを聞かせて、英語で起こすなんてことも。
椎名なるほどなあ。便利だなあ。
竹田だからインタビューなどはだいぶ楽になりました。
椎名精度はどうなの?
竹田実は椎名さんと僕の先日の会話があるんです。以下、起こし原文ママです。「名古屋場所みてましたか?みてたよ。若鷹影が出てましたね。勝ち越したのは偉い。まだ膝が痛い見たい。人体ですっけ?どうだっけ。だけど復帰したので盛り上がった」
椎名おお、けっこうちゃんとしてるんだね。発言者が変わると句点が入るのはすごい。
竹田そうなんです。若隆景とか靭帯とか誤字はあるんだけれど、なんのテーマで会話しているか把握していれば十分に活用できる。
椎名お金はかかるの?
竹田僕が使っているツールは無料なんですけれど、有料バージョンもあって、それは過去のテキストを蓄積して学習していくなどさらに賢くなる。
椎名例えば医療系の原稿をたくさん書く人なら、どんどん専門用語を覚えて精度が高くなっていくってこと?
竹田ご明察。インターネットと接続したり、他のテキストとリンクしたり、多言語翻訳もできるとか。やったことはありませんが。
椎名すごい世の中だねえ。
竹田AIが小説を書くという話もその延長線上にあって。
椎名傾向を学習させるのか。
竹田あくまで実現可能ってだけですが、椎名誠の全著作を読み込ませて「昭和軽薄体でタコとイカの純愛小説を」とコマンドすると、何かしらの文章が生成される。
椎名読みたいような読みたくないような。
竹田AI自動小説生成サービスなんてものもあります。芥川賞などでも対話型人工知能と呼ばれる「ChatGPT」が作品の一部を書いているという話題もありました。
椎名ああ、それは聞いた。難しい問題だけど、もう自分には関係ねえやとも感じた。
竹田では身近な例で挙げると、麻雀なんかにも取り入れたらいいかもしれないっす。
椎名どういうこと?
竹田まあ、データありきなのかもしれないですけれど、AIを駆使してトクヤさんのドラ待ちリーチとかを全部、看破するとか。
椎名それは面白そうだな。でもあいつ悪運が強いからツモるんだよ。
竹田それがまた麻雀の面白いところですよね。
椎名麻雀は確率論のゲームでもあるからAIは強そうだよな。
竹田将棋や囲碁などもうAI抜きには成り立たない、と断言する人もいますし。
椎名君らのような若い世代はうまく付き合っていかないといけないんだろうね。反乱に遭わないように。
竹田システムの逆襲。本当にありそうで怖い。
椎名誠:バカ旅酒作家。マグロ、焚き火、パタゴニア。
竹田聡一郎:フリーライター。レバ刺し、ブラックジャック、ポルトガル。