144杯目:シーナさんに質問だ! 3丁目まつり特別編
暑いのでせめて涼しい写真を
岩手県花巻市/椎名誠撮影
(NIKON Df)
竹田恒例の「シーナさんに質問だ!」です!
椎名はいはいはいはい。
竹田返事は1回で!
椎名はいはいはい。
竹田といっても今回は、5月に行われた「新宿3丁目まつり」の際に、参加者や読者のみなさまから直接、ぶつけられた質問がありますので、それに回答していきましょう。
椎名はいはい。
竹田まず、シンプルなものです。あの日、第二部および宴会会場だった「池林房」で使ったドリンクチケットについて、都内在住の女性から「これは後日、池林房チェーンで使えますか?」という質問。
椎名ははは。使えるの?
竹田ごめんなさい。ダメです。池林房でも浪曼房でも陶玄房でも犀門でも使えません。でも太田篤哉社長が運良くその場にいたら、ダメ元で聞いてみてください。
椎名女性にならあいつは奢るかもしれない。
竹田また適当なことを。でも、可能性はあるかもなー。ドリンクチケットの使用は保証できませんが。続いては埼玉県からいらした男性より「池林房でとてもリラックスして飲んでいる椎名さんを見ることができて嬉しかったです。聞けばいつもあの席に座っているとか。今度、私も座ってもいいでしょうか?」ですって。
椎名別にいいんじゃないの。
竹田店に入って右手の櫓というかあの一画が打ち合わせしやすいので、おのずとシーナ指定席みたいになっていますね。ただ、専用席ではありませんので、むしろガンガン使ってください。あそこでマグロをツマミに生ビールをうぐうぐとやっつける「なりきりシーナごっこ」は我々も時々、やってます。
椎名そうなのか。
竹田あとはですね、僕が直接、質問されたんですが、答えに窮してしまって。
椎名何を聞かれたの?
竹田西日本からいらした女性読者からの「竹田さんはドレイとして怪しい探検隊(雑魚釣り隊)に入隊して、いまや副隊長。出世の秘訣を教えてください」という質問です。
椎名そうかあ。君は最初はドレイだったかあ。
竹田そうなんですけれど、僕が入隊した時には長崎のバカ兄弟という、働き者の先輩ドレイがいたので、兄の太陽さんに「太陽さん、安定した水の運び方を教えてください」とか、弟の童夢に「童夢が洗った皿ってなんでこんな綺麗なんだ? もっとお手本を見せてくれよ」などと言って、彼らにやってもらってました。
椎名アクドイ新人だったのか。
竹田言葉が悪いですな。バカ兄弟とハサミは使いようという諺もあるくらいですから。そのあとは「おかしら」という、キャンプ出欠確認や年に一度のキャンプ道具の整理などを取り仕切る役職に就きました。
椎名あの頃はドレイが増え過ぎて、反乱がありそうだった。
竹田僕はまだ若かったから、椎名さんに「お前はおかしらだからドレイをうまくまとめるんだぞ。不穏な動きがあったら報告するように」と言われて「イエッサー」とまんざらでもなかったのです。しかし、後から考えると隊の半分がドレイとなり、反乱を恐れた隊長が機先を制す形だったのですね。
椎名策士シーナと呼びなさい。
竹田まあ、それは冗談なんですけれど、もうちょっと続きがあります。僕は仕事がら出張が多くて、自分の出張旅のスケジュールを組み立てたり、そこに休みをくっつけて当地の酒をかっくらったりしていたわけです。若い頃はけっこう出鱈目に動き回ってました。
椎名今だってそうだろう。
竹田2010年かな。サッカーの南アフリカワールドカップの取材を終えて帰国して、その翌日が『あやしい探検隊 北海道物乞い旅』(角川書店)の出発日だったんです。
椎名ずいぶんなスケジュールだったんだな。
竹田正確には、南アフリカから帰国してから中2日の準備の時間をとっていたんですよ。そしたら全体統括の西澤亨がですね「おい、出発は明日になったからな。遅れるなよ」と帰国日に言ってきやがって。
椎名横暴だなあ。
竹田まったくです。時差ボケもあったし、その旅はフェリーだった。
椎名大洗か。
竹田そうそう。だから飛行機で行けば帯広あたりから合流できるから「飛行機でおっかけます」と言うと「ダメだ。ドライバーが足りない」と。
椎名俺もあの頃は運転していた。
竹田そうそう。三菱のトライトン時代ですね。椎名さんはメインのドライバーでした。
椎名とても長い時間運転していた覚えがある。
竹田それが本題なんです。大洗から苫小牧にフェリーに乗って、新ひだか町、釧路、厚岸、別海。オホーツク海まで道東を走破してから、北見、旭川の内陸を抜け、太田篤哉の故郷岩見沢で休んでから札幌を超えて、椎名さんの別荘があった余市がゴール。10日足らずで2000kmくらい走ったんじゃないかな。うまいもんは食ったけれど、正直「眠かったな」という記憶のほうが強い。
椎名なんでそんな強行軍にしたの?
竹田半分は任命した椎名隊長のせいなのですが、さっきも名前が挙がった全体統括の西澤亨と、大食いカメラマンの齋藤浩に旅程を任せていたのです。彼らは運転免許を持っていなかったんですね。だからそんな狂ったスケジュールを組んだ。詳しい恨み節は文庫版『あやしい探検隊 北海道乱入』(角川文庫)の解説に書きましたが、「二度とあんな旅はしたくない!」という思いがあって、次の旅の幹事に僕が立候補したんです。
椎名次の旅ってどこ?
竹田韓国の済州島です。『あやしい探検隊 済州島乱入』(角川書店)の舞台。ちゃんとリサーチしてロケハンして無理ないスケジュールを組み、本も売れましたし、目黒さんからは「椎名誠の仕事 聞き手 目黒考二」で「これまでの雑魚釣り隊ものではベスト1」というお言葉をいただきました。
椎名そうだったか。確かにあの旅は拠点を3つにしぼったからじっくりみんなで遊べたし、楽しかった。
竹田隊員もみんな参加してエンジョイしていたし、おそらく「成功の旅」と言っていいと自負しています。
椎名そのあたりから君が台頭してきたというわけか。今や国内外問わず幹事だもんな。
竹田そういうことです。えっへん。だから、長くなってしまったけれど「出世の秘訣を教えてください」に答えるとすれば、「適切な旅のスケジュールを組めるようになること」としか言えない。
椎名あとはズル賢さだな。
竹田質問、あとひとつあるのですが、すいません。僕の話が長くなってしまいました。
椎名鬱憤がたまっていたんだな。次回にしよう。
椎名誠:バカ旅酒作家。夏休みの宿題はけっこう好きだった。工作などをよくやった。
竹田聡一郎:フリーライター。怪しい雑魚釣り隊副隊長。夏休みの宿題は嫌いだった。