139杯目:命名バナシ
なかなか原稿は進まない
大阪府豊中市/竹田聡一郎撮影
(“チェキ” instax mini 8)
竹田質問です!
椎名はい、竹田くん。いつも元気いいですね。
竹田声の大きさと元気だけが取り柄です。
椎名うむ、バカっぽくてよろしい。
竹田コラムなどを書く際に仮名を使う時があるんですけれど、事情がない限り僕は「タナカ」とか「タカハシ」とか、当たり障りのない名前を使うんです。
椎名ふんふん。
竹田原稿の性質にもよるんですが、具体名があったほうがいいだろうな、という時にインパクトが欲しかったり、「なんかいい人そうだな」というイメージを与えたい時に困ってしまうんです。
椎名名前は大事だからなあ。
竹田椎名さんはどうやって、作中の登場人物を命名しているんですか?
椎名適当!
竹田言うと思った。それだと話が終わっちゃうんです。
椎名具体例をくれよ。
竹田じゃあ、『 アド・バード 』(集英社)の「赤舌」はどうやって決めたんですか?
椎名気分としてはナメススリだ。
竹田なんですか、それは。意味がわからない。
椎名ああいうのは感覚だからねえ。
竹田やっぱりそうですか。イメージがあって、その後に「素早い」とか「触手を持っている」とか決めていく、と。
椎名そう。「触手のある怖い生き物を出そう」というイメージが先行する時もあれば、音の響きとして面白いとか妙なものが先行することもある。
竹田オノマトペとはちょっと違うかもしれないけれど、耳に残る言葉ってありますもんね。
椎名そうだね。優れた作家はみんなその感覚が鋭いかもしれない。宮沢賢治は超感覚で別格だが。
竹田『アド・バード』はSFですが、普通の小説はどうなるんですか? 例えば『 ぱいかじ南海作戦 』(新潮社)のオッコチ青年あたり。
椎名詳しくは忘れてしまったけれど、あれは南の島で実際に出会った人のイメージで、憎めないキャラクターから連想される音にしたんじゃないかな。なんたって「オッコチ」だから。
竹田なるほど。全部聞いていくのも野暮なので控えますが、「アパ」とか「マンボさん」とかもなんとなく南の島の開放的な響きですよね。
椎名日常で「私の名前はアパです」と言われると、「変わった名前ですねえ」となるけれど、物語の中は許容の幅は広くなるのかもしれない。
竹田なるほど。余談ですが、僕はその「アパ」役を映画で演じた貫地谷しほりさんにインタビューしたことがあるんです。
椎名そうなのか。
竹田綺麗な人ですよね。インタビューで『ぱいかじ南海作戦』の話になって、椎名さんがロケ地に遊びに来た時に挨拶したんですって。
椎名あー、ロケ地には行ったかもしれない。
竹田「作家さんって書斎にこもって仕事されるイメージだったんですけれど、椎名さんはすごく日焼けされていて、なんだかいい意味でイメージと違いました。背も高くてかっこいいですねえ」とおっしゃってました。
椎名すごくいいヒトじゃないか。
竹田そのインタビューをした翌週に雑魚釣り隊釣行があったんですよ。福島のいわきだった気がしますが、隊長だけ美人に褒められて悔しかったので、特に報告しなかった記憶があります。
椎名報告連絡相談はすぐにしなさい、といつも言ってるだろう。
竹田ケッ。
椎名自分で話をはじめたんだろう。
竹田そうですけどね。いま椎名さんが「すばる」(集英社)に書きためている「人間証拠博物館」とか「巨大歩行機ゴリアテ」あたりはまだ読めていないのですが、一冊にまとめて書籍化しないんですか?
椎名うん、進行中です。
竹田おお、では命名に注目しながら読んでみます。
椎名誠:バカ旅サケ作家。最近は『男はつらいよ 寅次郎真実一路』が好きだ。『男はつらいよ ぼくの伯父さん』も捨てがたい。
竹田聡一郎:ビール好きのフリーライター。今年は『カラオケ行こ!』が暫定1位の映画。青春モノを撮らせたら山下敦弘監督だなあ。
