138杯目:新宿3丁目まつり報告その3、すごい男がいたもんだ編

138杯目

「男はつらいよ」のほか「生活の柄」など全6曲を熱唱
東京都新宿区/竹田聡一郎撮影
(“チェキ” instax mini 90 ネオクラシック)

竹田先月の「雑魚釣り隊20周年記念 新宿3丁目まつり」からもう1ヶ月が経とうとしています。

椎名早いねえ。

竹田ここでイベントレポートを、と思って進めてきたのですが、2回やってまだ本編に入ってない。

椎名バカたちが暗躍してたからなあ。

竹田バカたちの親分は開始前から控室で生ビール飲んでましたなあ。

椎名天気良かったからねえ。

竹田雨でも雪でも飲むくせに。

椎名雨だったら焼酎梅干し入り、雪だったらウイスキーのお湯割りかな。

竹田んなどうでもいいことはほっちゃって、イベント本編に参ります。まずはシーナさんのトークショー「嗚呼、釣れずに20年」ですが、これについてはちょっと言いたいことがあります。

椎名なんだい?

竹田雑魚釣り隊の20年の歴史を話してくれるはずだったんですよ。シリーズ第一作の『わしらは怪しい雑魚釣り隊』(マガジン・マガジン)から最終刊『サヨナラどーだ!の雑魚釣り隊』(小学館)まで全8冊を用意して、壇上にもずっとキャンプで使っていたコールマンのアウトドアテーブルを置いて。

椎名そうだったのか。

竹田椎名さんは自著を「なんだこの本は」くらいな感じでまさかのスルー。それでも最初は「どうして自分が男だらけの怪しい探検隊とか雑魚釣り隊とか、そういうものをはじめたのかと言いますと」と、いい出発点だったんです。

椎名いいじゃないの。

竹田哀愁の町に霧が降るのだ』(情報センター出版局)の舞台である克美荘の話から入るのかな、と思ったらその話でノッてしまうというか、「先週は『本の雑誌』の浜本と会って……」と小岩トークから本の雑誌に脱線したり、話があっちこっちに。

椎名そうだったか。

竹田途中、舞台が照明で暑かったのを理由に生ビールを発注して「うまいね。あとはなんだっけ」とか言い出したので、最終的にはコンちゃんに登場してもらって「今日はアジフライが食べられます!」と発表、という流れでした。

椎名そうだったか。まあでも、みんな楽しそうなのでよかったよかった。

竹田んな楽観的な。ともかく第二部のライブ「樋口のギター」に進んだわけです。

椎名樋口ってタコの介?

竹田よくぞ聞いてくれました。壇上でザコが説明していたんですけれど、あいつは「樋口さんがゴールデン街のビッグリバーという店であばらバビューンでして」みたいな感じだったので、少なくとも参加者のみなさんにはまったく意味わからんかったと思います。

椎名バカだなあ。でも面白いなあ。

竹田今さらながらちゃんと説明すると、樋口とは、椎名さんが命名した「タコの介」こと樋口正博さん。酔うとタコのように赤くなるとか、いつも酔っ払ってクネクネしているとか、由来は諸説ありますが、『わしらは怪しい雑魚釣り隊』(マガジン・マガジン)の企画者であり、当時の掲載誌であった「つり丸」の編集長ですね。

椎名いいキャラクターだったよなあ。

竹田2019年の宮古島遠征に参加してくれて、残念ながらその夏にご逝去されました。スポーツ好きだったので、焚き火でウイスキーやりながら彼とサッカー談義したのは僕の黄金時間のひとつでした。

椎名ギターも弾くの?

竹田一度、塩尻の彼の実家に遊びに行ったのですが、エレキギターやアンプがたくさんありました。

椎名多趣味なヒトだったんだね。

竹田いろいろ端折りますが、さっきのザコの説明にもあったゴールデン街に「ビッグリバー」という飲み屋がありまして、そこのママさんが釣り好きなんですよね。大川さんという方なんですけど。

椎名なるほど。ビッグリバーね。

竹田そうそう。タコの介やコンちゃんが常連だったので、ザコやベンゴシも行くようになり、今もちょこちょこ顔出しているんです。

椎名ふんふん。

竹田その店にタコの介はギターを置いていたんですって。酔って弾いてたんですかね。彼がいなくなってしまい、そのギターが埃をかぶっているとザコが聞いて「だったらください。ちょうど雑魚釣り隊20周年のイベントあるんでそこで弾きます」と引き取ってきた。

椎名そんなエピソードがあったのか。

竹田ちょっと泣いちゃいました。

椎名いい盛り上げ方をしていたよ、ザコは。仲間たちもいいヤツらだった。楽屋で話ができたんだけれど、みんな個性的で話がうまかった。

竹田それぞれ自分の仕事やバンドを持ちながらというメンバーですってね。楽しいステージにしてくれました。ありがとうございました。近々、打ち上げしましょう。

椎名それはいいなあ。

竹田あとは第二部に乱入してくれた「新橋烏森口ビールボーイズ」がいたじゃないですか?

椎名彼らも面白かったねえ。そんな名前だったのか。

竹田「ONE TRACK MIND」のZAKOはお馴染みですが、「LOCOPOP」のKEN、かつて「GOING STEADY」という人気バンドでギターを鳴らしていたアサイタケオの両名は、熱烈なシーナ読者なんですって。ザコが「宴会で『すごい男の唄』を演ってくれ」とオファーして結成したようです。

椎名ビールを回せ。

竹田そう、サントリービールのCMソングですね。第一部で椎名さんはその撮影時のエピソードを話していて、タイムリーではありました。

椎名そうだろう。緻密な計算があるんだ。

竹田嘘だ。偶然でしょう。すごい男がいたもんだ。

椎名まあとにかく彼らも盛り上げてくれたし、参加者もたくさん飲んだし、いい宴だった。

竹田お疲れ様でした。

椎名あの後はどうしたの?

竹田中締めが17時。椎名さん含めスタッフで最後に乾杯して、椎名さんがタクシー乗ってすぐ解散。

椎名本当に?

竹田なんてわけはなく、21時過ぎまで飲んでました。

椎名ひええ。楽団は?

竹田それが傑作でして。最後にちょっと挨拶ができたんですが、「楽しかったー」と言ってくれてすごい気持ち良く別れたんです。

椎名ふんふん。

竹田ほろ酔いでみんなで地下鉄に降りていったのに、改札を通る前に「なんかこのままじゃ帰れないな」「そうだな」と明確な理由もなくまた地上に出てきて、そこから数人は21時くらいまでしつこく飲んでました。

椎名なぜ一度、地下に降りたんだ。

竹田そこが謎なんですけど、いちばん面白い。

椎名ともかく気持ちの良い面白い楽団だったね。全国ツアーどうしようか。

竹田我々はともかく、彼らには薄謝しかお渡ししていないので、再オファーできないっす。

椎名ビール飲み放題をつけよう。

竹田可能性はあるかもしれないですね。なんせザコを通して「謝礼なんて別にいいから、第二部は飲み放題にしてほしい」という要望を出してきたくらいですから。

椎名面白いヤツらだなあ。また遊ぼう。

竹田全国ツアーは別にしても、またイベントくらいはやりましょう。

椎名頼むよ。みんなお疲れ様でした。楽しかったよ。

椎名誠:旅作家。6月は梅雨でジメジメするから嫌だね。相撲もないしつまらない。酒を飲むしかないじゃないか。

竹田聡一郎:フリーライター。6月は交流戦があっていつもカープは負けるが、今年はいい感じだ。広島に行ってきます。

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