128杯目:ビジホ百態

128杯目
旅にはネオンも欠かせないのだ
青森県青森市/椎名誠撮影
(FUJI FinePix S5Pro)

竹田椎名さんってホテルに文句言わないですよね。

椎名どういうこと?

竹田取材旅など同行させていただいていますが、たいていビジネスホテルのシングルルームとかじゃないですか。作家先生ですから、いわゆる下にも置かない扱いかと思いきや、我々とそんなに変わらない。

椎名寝るだけだからね。禁煙室であればそれでいい。まあ、饐えた匂いのする部屋とかは嫌だけど。

竹田以前、奥会津からの帰り、大雪で緊急避難した時の館林のホテルはそんな感じでしたね。

椎名おばあといい、狭い部屋といい、暖房器具のうなるような音といい、なかなかでコワかった。

竹田そのあとに椎名さんはコラムで「つげ義春の世界だった」と書いてました。

椎名変なホテルとか宿にはあんまり泊まりたくないんだけれど、泊まったら泊まったで「これで何か書けるな」というスケベ心はある。

竹田なるほど、一種の職業病ですなあ。

椎名でも、ビジネスホテルに対しての細かい文句ならあるんだ。

竹田どういったことでしょう。

椎名なんか全体的に暗い。

竹田あー、同意します。間接照明みたいなのでオシャレ感を出そうとしているのかもしれません。

椎名眠くなるまで本を読みたい時が多いから、もっと明るいほうが助かる。

竹田枕元に「読書灯」なるものが設置されている部屋もあります。

椎名あるけどさ、豆電球みたいなのつけられても困る。いっそランプシェードを外してしまいたいんだけど、あれ固定式のやつが多いんだよ。

竹田試したんですね。椎名さんは粗暴で力任せにやるから壊してそうだ。枕元のライトも分かりにくいですよね。寝ようとしていろいろなスイッチをパチパチやると窓際のスタンドランプだけがいつまでも灯いていて、結局それはダイレクトに消さないといけないやつで布団から這い出てゆく。

椎名ははは。

竹田せっかく眠れそうだったのに、もう1杯ウイスキーなどを飲み始めてしまう。

椎名それとは違うケースだけど、壁が薄いホテルで隣におとっつぁんがいてすげえイビキを鳴らしていると気になって眠れなくなることは多い。あれは地味に辛い。

竹田あー、僕は割とどこでも眠れるので問題ないんですが、雑魚釣り隊で天野と同じ部屋になった時、常にエアコンを18度に設定するのであれだけは嫌です。

椎名なんでそんなことするの?

竹田暑いんでしょうね。霊安室みたいな部屋でヤツはいつも寝てます。

椎名トクヤもそうだよ。

竹田あー、そうそう。岡山だったかな。夏にみんなで行った時、椎名さんとトクさんが同じ部屋で、椎名さんが朝に電話してきて「起きたらトクヤが行方不明だ」って。

椎名そんなことあったっけ。

竹田結局、リノリウムの廊下かなんかで発見されて、「部屋が暑かったけれど、冷房かけると椎名さんが『冷房は嫌いだ』って怒るんだもん」と語っていました。かわいそう。

椎名ははは。同宿者の問題はあるよな。

竹田雑魚釣り隊でだいぶ慣れましたけどね。あと関係ないけれど、ビジネスホテルの自動販売機で売っている缶入りの柿の種はなぜかおいしい。

椎名なにか違うの?

竹田わからないです。一回、あまりに美味しいので調べて取り寄せたんです。龍屋(たつや)物産という神奈川県伊勢原市の会社なんですけどね、取り寄せて自宅で食べたら美味しかったですが、旅先よりどこか劣る。なんでなんだろう。

椎名そういうことなんだな。

竹田ううむ。あとですね、昔、諫早のホテルで椎名さんの部屋が広かったんですよ。だからちょうどやってたプロ野球の日本シリーズを椎名さんの部屋でみんな飲みながら観て、終わってから風呂も豪華だったから入ろうと思ったら、「もう帰れ」と追い出されたのは悲しかったです。

椎名当たり前だろう。

竹田あとですね、青森で……。

椎名もう帰れ。

竹田ぎゃふん。

椎名誠:酒飲み旅作家。三月場所が面白かったからまた相撲熱が増してきた。五月場所は伯桜鵬に期待したい。

竹田聡一郎:ビール偏愛フリーライター。なんで桜の花びらが缶ビールにプリントされていると買ってしまうんだろう。

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