123杯目:足と枕のない20年

123杯目

飲んで食って歌ってまた飲んでいる人々
沖縄県宮古島市/竹田聡一郎撮影
(カメラ:SONY/レンズ:TAMRON 50-400mm)

竹田前回の終わりで触れた、雑魚釣り隊がらみの読者の誤解ってなんですっけ?

椎名そうそう。この前、言われたんだ。「椎名さんも大変ですね。みなさんの交通費を負担して」って。

竹田あー、その件ですね。僕らも「椎名さんにいろいろなところに連れてってもらっていいですねえ」と言われたことありますよ。ごくまれに悪意ってほどでもないけれど、ちょっとチクリとする言い方をされることも。

椎名そんなわけないのにな。

竹田何年かに一度レベルで航空会社や旅行代理店、あとは現地の観光協会などがスポット的に経費を負担してくれることがありますが、顎足枕付きなわけがない。

椎名顎はついているんじゃないの?

竹田あー、そうか。もっといえば喉と顎ですね。これは基本的に出版社に甘えている。まあ、出版社の企画ですから当然といえば当然ではあるのですが、ありがてえありがてえ。

椎名「つり丸」時代はマガジンマガジンが、メジャー移籍を果たした後の「週刊ポスト」時代は小学館が、それぞれの版元が酒代とメシ代だけはずっと負担してくれていた。

竹田その「メジャー移籍」って表現をすると、「つり丸」元編集部員のコンちゃんが「どうせ弊誌はマイナーですよ」と拗ねて面倒だったんすよ。

椎名わはは。でもそんな彼は今、ライバル誌の編集部員なんだろ?

竹田そうなんです。辰巳出版の「釣り情報」で釣ったり撮ったり書いたり酔ったりしているようです。阪神から巨人、レアルからバルサみたいな話ですが、ご活躍です。

椎名立派なことだよ。

竹田雑魚釣り隊のメジャー移籍の時、椎名さんは当時の週刊ポストの編集長に「基本的にはキャンプで、自家用車でキャラバン隊を組む。取材費はそんなにかかからない。だからメシと酒だけは予算を削らないでください。若いヤツも多いし」というようなお願いというか密約を交わしているんです。

椎名そうだね。嘘はついていない。

竹田そうなんですけれどね、蓋を空けてみれば飲むわ飲むわ。買い出しと経理を担当していた健太郎が忍者の巻物くらい長いレシートを手に巻きつけて「あんたら本当によく飲むなあ」と途方にくれていました。

椎名おそらく交通費を出したほうが安い。

竹田ホントですね。話を戻すと、基本的には顎と喉はあったけれど、足と枕はなかった。

椎名みんな自腹なのに北海道から沖縄まで、全国に来てくれた。嬉しいよ。

竹田初代のオリジナル怪しい探検隊と、第二次“あやタン”にあたる「いやはや隊」の頃は経費はどうだったんですか?

椎名最初の頃は企画でも連載でもなかったから完全自腹だった。小安が会計などを取りまとめてくれていたと思う。

竹田おお、“陰気な小安”こと小安稔一さんですね。今のぼくの役割とかぶるものがあるので、一度、お会いしていろいろとお話をうかがいたかった。

椎名遊びという意味では最初がいちばん純度は高かったかもしれないなあ。

竹田第二次のいやはや隊はカヌー作家の野田知佑さん、水中カメラマンの中村征夫さん、写真家の佐藤秀明さん、登山家の大蔵喜福さん、バイク冒険家の風間深志さん。岡田昇カメラマンなど、それぞれの道のプロが集っていました。

椎名そうだね。彼らはそれぞれの連載媒体を持っていたから、一緒にキャンプをして、みんな自分のフィールドでうまく仕事にしていたんじゃないかな。

竹田なるほど。同じキャンプで違う創作活動をしていたのか。それは合理的ですねえ。そうなると我々、雑魚釣り隊は真に有象無象ですな。

椎名君はよくそう言うけれど、だからこそ来てくれて嬉しいし、みんな俺がいないところでもよく集まって飲んでるだろう。結束という意味では雑魚釣り隊はいい集団だと思う。

竹田おお、みんな涙を流してこれを読むでしょう。ひとえに副隊長の働きによるものですなあ。

椎名副隊長って誰だっけ?

竹田「ズコー」って漫画みたいな擬音が出そうでした。僕です。あんたが任命したんでしょうが。

椎名そうだっけ?

竹田もう! まあ、それはそれとして、実は雑魚釣り隊は今年で結成20年なんです。

椎名えー、そうなの?

竹田2004年の秋に初遠征を大島に敢行していて、2015年に10年経過のイベントを新宿でやりました。

椎名あー、あれは良い催しだったね。よし、久しぶりにどーんとやるか。

竹田椎名さんの「どーんと」は、それこそいやはや隊のみなさんが参加した八丈島の「どか酔いセミナー」や「やまがた林間学校」クラスになってしまうから怖い。詳しくは『あやしい探検隊 海で笑う』(情報センター出版局)あたりに載っていますが、椎名さんが当時のように企画立案から入ってくれるなら別ですが。

椎名それは副隊長の仕事だろう。

竹田忘れてたくせに。まあ、どーんとできるかは分かりませんが、そーっとやってみましょうかね。新宿で。

椎名続報を飲みながら待つように。

椎名誠:酒飲み旅作家。最近、ひょっとしたら自分は甘いものが好きなのではと気づいて戸惑っている。

竹田聡一郎:ビール偏愛フリーライター。4年間、毎日ヨーグルトを摂っていたら花粉症がだいぶ緩和された。

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