120杯目:JPN47

120杯目
写真を見るとなぜかどこの海なのか思い出す
沖縄県石垣市/椎名誠撮影(FUJI FinePix S5Pro)

竹田前回の最後に出た47都道府県踏破のお話です。

椎名はいはい。

竹田新幹線や自動車での通過、SAなどの立ち寄りも除き、あくまで宿泊を伴う訪問ですね。

椎名はいはい。

竹田旅作家の椎名さんにとっては今更の話題かもしれませんが、ヤル気出してください。

椎名君だって地方の仕事が多いから、いろんなところに行っただろう?

竹田そうですね。でも僕はサッカーの仕事では海外が多くて、カーリングの取材では北海道や青森、軽井沢あたりが中心なので偏りはありました。終盤に残ったのは山形、岐阜、奈良、徳島でした。

椎名ふーん。

竹田椎名さんは『にっぽん・海風魚旅 怪し火さすらい編』(講談社)をはじめとした、週刊現代に連載していた「海を見にいく」シリーズだけでも大半の都道府県に行ってるもんなあ。

椎名海っぺりってさ、だいたいのところが気持ちがいいから下手に観光地とか行くよりよっぽど原稿を書きやすいんだよ。

竹田なるほど。僕は宮田珠己さんのファンなんですけれど『晴れた日は巨大仏を見に』(幻冬舎文庫)は、「巨大仏」という縛りのみで面白い紀行が成立しています。テーマや方向性は違うけれど、椎名さんの「海を見にいく」や『ニッポンありゃまあお祭り紀行』(カラット)などの、ワンテーマでどこかに出かけて書くというのはいまだに憧れですし、いちばん心躍る仕事ではあります。

椎名宮田さんの『スットコランド日記』(本の雑誌社/幻冬舎文庫)なんかそうなんだけれど、何もない、何も起きないところで何を見ているのかというのが重要なのかもしれない。

竹田ふんふん。同時に観光地は対極にある「何もないところ」は、「地域の生活や文化が息づくところ」の場合もあります。

椎名どういうこと?

竹田最後の県、徳島に行った時に手ぶらで散歩してたんですよ。そしたら、某所にたこ焼きの屋台があって、ちょうど小腹が空いていたので食べたらすごい美味しくて。近所のおじいちゃんとか高校生が続々と来る人気の屋台でした。あれはガイドブックやインターネットには載っていないだろうな、と。

椎名うん。しっかり風景を見ながら旅してないと見落とすものは多いかもしれないね。

竹田そういや、この前、仙台に仕事で行ったんですけれど、壱貳参横丁の焼き鳥屋に行ったら椎名さんのサインがあって、「おお!」となりました。

椎名なんて店?

竹田「仙壱屋」という店です。お通しからしっかりうまい、いい店でした。

椎名覚えてないなあ。

竹田「うまかった」って一言添えてましたよ。タケダ統計によると椎名さんが何か言葉を添える店は良い店なので、きっとエンジョイしてたんだと思います。今度、一緒に行きましょう。

椎名きっと地元の人に連れてってもらったんだろうな。名物とかではなく、その土地の人に愛されている焼き鳥屋とか居酒屋は外れがないからね。

竹田地元、ご当地という意味ではポプラ文庫から出ている『とっさの方言』という47都道府県の方言を網羅した作品に、椎名さんは千葉代表として参加しています。

椎名そうだっけ。

竹田千葉の方言や出身者の口調ってパッと思いつかないんですが、何を書いたんですか?

椎名おそらく漁師言葉じゃないかな。小さい頃から聞いていたから。

竹田千葉に限らず漁師さんの言葉って荒いんですけれど、カッコいいですよね。

椎名何を書いたんだろうな。気になってきた。

竹田調べておきます。さて、次はどこに行こうかな。

椎名どこでもいいんじゃないか。大切なのは全部の土地に行って、誰かに「鳥取で何したの?」と聞かれた時にちゃんと答えがあるかどうかだ。

竹田なるほど。「鳥取砂丘はでっかかった」はあまりにもバカみたいだし、行かなくてもある程度、分かる。

椎名そうそう。で、鳥取で何したの?

竹田スーパーで売っている安くてうまいとうふちくわをわさび醤油で食いました。あとは桜の名所の穴場があって綺麗で、冬は意外と雪深かったりするんですが、カニを食いました。県庁所在地のある代表駅で最後の有人改札の駅なので鉄道旅に情緒がありました。

椎名ふんふん。そういう情報は聞いてて楽しいし、行きたくなる。

竹田結局、どこへ行くかではなく、何を見るかなのか。

椎名どんどん出かけなさい。

椎名誠:バカ旅酒飲み作家。冬期は鬱が待っているので宮古島にニゲル。オリオンビールと菊之露とゆし豆腐。

竹田聡一郎:フリーランスの麦酒ライター。北海道取材でしばれた身体をあたためるためシーナを追って宮古島へ。

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