109杯目:映画は願望だ、意味じゃない

109杯目

写真に特に深い意味はない
北海道のだだっぴろい森林/椎名誠撮影(ライカM9)

竹田カナダに行っていたばかりなのに、またどっか行きたいっす。

椎名向こうでたくさんビール飲んでたか?

竹田おお、よくぞ聞いてくれました。カナダはビール大国ですからねえ。西澤先輩の賢息、快君がバンクーバーに留学していたので、いくつか良質のブリュワリーを紹介してもらってエールぐびぐび、IPAごくごく、スタウトうぐうぐの素晴らしい日々でした。

椎名るせえぞ!

竹田そっちが聞いて来たんでしょう。ビールの話を続けたいところですが、長距離移動だったので107杯目で触れたように、まとまった量の読書ができて、機内では見逃した映画などもいろいろと見ることができました。

椎名良かったなあ。

竹田そんな話を年下の女の子としていたら、「面白い映画教えてください」と言われて、即答できなかった、というのが今回の本題であります。

椎名なんで? 好きな作品を挙げればいいだけじゃないの。

竹田そんな単純でいいのかな。

椎名言っていることがよく分からない。

竹田相手が男性なのか女性なのか。年齢や出身地などパーソナルな部分は考慮してあげたいんですよね。例えば趣味が山登りなら、90杯目で紹介した『帰れない山』みたいに山岳がらみの作品がいいのかな、とか考えちゃうんですよ。

椎名ソムリエじゃないんだから。

竹田挙げた作品を実際に観て面白くなかったら悪いし、「竹田ってセンスねえな」と思われるのも怖い。「面白い映画」って言われているのに、『パラサイト』みたいな、全面ハッピーとは言えない作品を挙げるのも迷ってしまうんです。

椎名「半地下の家族」か。なるほど。一理あるとは思うけれど、向こうが聞いてきたんだからそれでもいいだろう。考えすぎです。

竹田あー、そうか!

椎名どうした? アホ面で大きい声出して。

竹田アホ面はいつもっす。ほっといてください。僕は相手に合わせて作品をチョイスしていたんですが、逆でもあったってことです。

椎名続けなさい。

竹田おそらく本の趣味も同様な部分があると思うのですが、こっちの挙げる僕の好きな作品の傾向から向こうが「ああ、竹田ってそういう人なのね」って判断すればいいってことか。ご指摘されたとおり、向こうが聞いてきた時はそれでいいのかもなー。

椎名面白くなかったらまた違うのを挙げればいいし、その意見を交わすことができるのも映画や文学のいいところじゃないの。我ながらいいことを言った。

竹田いま、「いいこと言いますね」と言おうとしたけれど、飲み込みました。そうか、思えば相手に合わせすぎだったのかも。なんかすっきりしました。

椎名昨今の世の中がそうなんだけど、相手とか周囲を気にしすぎなんだ。もっとみんな好きな物事に没頭したほうがいい。

竹田いいこと言いますね。

椎名ふふふ。

竹田では『セブン』とか『ユージュアル・サスペクツ』とか『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』とか『メカニック』とか偏った趣味を押し付けてやりますわ。最近では『アナザーラウンド』も良かったっす。

椎名うむ、それでいい。

竹田では椎名さんは「オススメ映画を教えてください」と聞かれたらなんと答えるのですか?

椎名最近の映画はあんまり観てないからなあ。無難なところでは『ミッドナイト・ラン』なんかは好きだよ。軽くこなして断然、面白い。あとは『ロング・グッドバイ』や『マーズ・アタック!』なんかだなあ。

竹田いいですねえ。お正月休みでスコッチ片手に楽しもうかな。

椎名感想戦をしながら生ビールを飲もうではないか。

椎名誠:旅する酒飲み作家。秋だが松茸などには興味はない。銀杏は好きだ。焼酎のお湯割がいい。

竹田聡一郎:旅するフリーライター。久しぶりに北米に行ったが時差ボケが昔より辛くてちょっとショックだ。

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