108杯目:冬がはじまるよほらまた鬱のそばで

108杯目
寒い風景を撮るのは好きだ
青森県のどこか/椎名誠撮影(Canon EOS 5D)

椎名どこかへ行ってたんだろ?

竹田カーリングの取材でカナダへ。ケロウナという街に滞在してました。

椎名もう寒いの?

竹田ちょうど秋から冬に移る時期だと地元の人は言ってましたね。10月末だというのに雪がちらついておりました。ちょっと予想が甘く、防寒具が足りなかった。

椎名寒いのは嫌だなあ。

竹田北海道に別荘を持っていた人のセリフとは思えませんな。

椎名あれこそ、冬の北海道を甘くみていた。すごい雪だった。

竹田椎名さんの別荘があった余市市は温暖な気候で知られていますが、それでもシベリア寒気団は強いですなあ。あのあたりはスキー場も多いし。

椎名そうなのか。

竹田知らないで買ったんすか。椎名さんは冬季鬱を抱えていますが、具体的にはいつ頃から「ああ、冬になっちゃうな。嫌だな」ってなるんですか?

椎名年内は年末進行とかあってバタバタしているので割と気にならない。年末年始も家族が集まったり、サケを飲む機会も多いのであんまり意識しないんだけどね。

竹田正月くらいから?

椎名正月は静かだし、だいたい晴れるから好きなんだ。雑煮もうまい。

竹田そしたら松が取れるくらいですかね。

椎名うん。1月も2月も嫌いだ。人間もなんとか冬眠できないだろうか。

竹田でも近年は宮古島文学賞の審査員をやられていて、2月と3月に宮古島に行ってますよね。暖かいじゃないですか。

椎名うん。行けばいつも心地よい風が吹いていて、シャツ1枚で過ごせるから気持ちがいい。しかし、家から空港に行くまでにコートを着ないといけないし、寒いと出かけること自体が面倒になってくる。

竹田いっそ、松が明けたら2ヶ月くらい宮古島に住めばいいのに。

椎名それもいいなあ。

竹田もちろんお付き合いしまっせ。毎朝、ゆし豆腐を食べて夜はオトーリ。よおし、各方面に連絡し……。

椎名やめておこう。

竹田どうして! 楽しそうじゃないすか。

椎名もし行くなら、波の音を聞きながら読書するような静かで思索的な暮らしがいいんだ。

竹田そういや『どうせ今夜も波の上』(文藝春秋)っていうタイトルの赤マント系エッセイがありましたね。

椎名そうだっけ。でも、波の上って悪くないな。君らみたいなのが大勢ガヤガヤするのはよろしくない。ビールもゆっくり飲みたい。

竹田老人と海。

椎名カジキ食われちゃうのは嫌だな。

竹田沖縄もそうだと思うんですけれど、南の島に住むとコートがいらなくなるらしいんですよ。

椎名いいなあ。

竹田この前、盛岡行った時に思ったんですけど、椎名さんって防寒は厳格にしますよね。

椎名寒がりなんだよ。

竹田コート着て冷麺すするのはだいぶ矛盾がある。

椎名冷麺を悪く言うな。

竹田いや、冷麺のことを悪く言ったつもりはないっす。

椎名でもコートのない暮らしはいいなあ。憧れる。シャツ1枚と漁パンとゲタ。

竹田漁パンとかギョ(漁)サンって、一般的な言葉じゃないっすよ。漁業従事者のみなさんが愛用するパンツ(ズボン)とサンダルって、説明しないと伝わらないかもしれません。

椎名そうなのか。

竹田釣りやサーフィンなどアウトドア好きな人には分かるかもしれませんが。

椎名まあとにかく気軽に過ごせる南の島はいいなあ、ということだ。

竹田でも北の冬も温泉熱燗鍋焼きうどんといろいろと企画すればいいもんでっせ。

椎名そうなんだけどなあ。いざ冬になるとコタツで丸くなってしまう。

竹田椎名家ってコタツありますっけ?

椎名ずーっとないんだ。あったら本当に冬眠しそうで怖い。

竹田ううむ。まあ、もうちょい寒くなったらいろいろ企画考えます。

椎名コタツ湯豆腐大会なんてどうだい。

椎名誠:旅する酒飲み作家。秋だが松茸などには興味はない。銀杏は好きだ。焼酎のお湯割がいい。

竹田聡一郎:旅するフリーライター。久しぶりに北米に行ったが時差ボケが昔より辛くてちょっとショックだ。

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