103杯目:縫ったら飲むな。飲むなら縫うな。

103杯目

こちら現場上空です
東京都渋谷区/椎名誠撮影
(“チェキ” instax mini 90 ネオクラシック)

竹田椎名さん、アタマ大丈夫ですか?

椎名どういう意味だい?

竹田あー、すいません。言い方が良くなかったっす。夕刊フジの「街談巷語」を読んだのです。転倒してアタマ打ったということなので。

椎名そうそう。痛かった。というよりも、あまり覚えていない。

竹田夜中だったんですか? 寝起きすか?

椎名そう。

竹田頭部を打って出血したってことですか?

椎名そうだね。血が出たのは眉毛のところ。

竹田あー、縫った跡がまだ痛々しいですね。

椎名痛みというより驚きが大きかった。

竹田正確には割創かな、挫創かな、裂創なのかな。とにかく内出血や視神経への影響などがなくて不幸中の幸いでしたね。

椎名それは医者にも言われた。

竹田コラムに書いていたように、今は縫い方や針や糸の種類がすごい増えたので一概に「5針」とか言わない。っていうのも勉強になりました。

椎名そうみたいだね。細かい麻酔をたくさん打たれたのは少し驚いた。医学は進歩している。

竹田確かに。昔ならもっと粗い治療だったかもしれませんね。正確には、眉頭裂創で縫合処置をした、ということなんですかね?

椎名ううむ、なんだか漢字が並ぶと大怪我みたいだな。もっと労りなさい。

竹田念のために確認したいのですが、自分ひとりで転倒したんですよね? ワルモノに押されたとか、地震の揺れに足を取られた、とかではなく。

椎名いかにも。

竹田お言葉なんですが……。

椎名嫌だ。編集者の「ご相談なんですが」と君の「お言葉ですが」は、できれば聞きたくない。

竹田僕は先日、左手の骨を折ったんです。

椎名そういやギブスしてないね。もう治ったの?

竹田日常生活はもう問題ないのですが、力を入れるとまだ少しだけ違和感があります。

椎名そうか、良かったね。心配で心配で夜はビールとウイスキーしか飲めなかったよ。時々、ワイン。

竹田酒ジジイめ。その95杯目で、椎名さんは第5中手骨骨折という憂き目に遭った僕に、あろうことか「なんか大袈裟だな。もっと自業自得転倒ザマミロ挫傷炎とか、小指ポッキリ馬鹿とか、そういう名前にしたほうがいい」と発言しているんです。

椎名言ってないと思うな。

竹田おお、言った言わないの水かけ論の泥試合になりそうだ。まあ、それはもはやどっちでもいいので、とにかくお大事にしてください。心配で心配でザ・プレミアム・モルツ ホップセレクト清らかダイヤモンドホップと赤武の純米ひやおろししか飲めません。時々、スコッチ。

椎名バカめ。

竹田でもかなり出血したでしょうから、血液を作る食材を摂らないとですね。

椎名鉄分鉄分。

竹田レバーが代名詞的な存在ですが、カツオやサンマなどもいいらしいですね。

椎名今すぐ持ってきてくれ。

竹田あとはしじみ、あさり、豆乳、小松菜。意外なところではがんもどきなど。

椎名ふーん。

竹田カツオのたたき、レバー焼き。あとはあさりとしじみを使った豆乳鍋に小松菜とがんもどきを入れる。これで完璧ですなあ。

椎名いいなあ。ちょっと鉄分摂取宴会を計画してくれよ。

竹田そうっすね。久しぶりにぶわーっと飲みますか。

椎名酔って転ばないようにな。

竹田こっちのセリフっす。

椎名誠:旅する酒飲み作家。10月は大相撲がなくて退屈なのでワインを飲もうと思う。たまには白ワインもいいな。

竹田聡一郎:旅するフリーライター。カープファン。新井監督はものすごいよくやっていると思うので広島の地酒「神雷」を飲む。

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