102杯目:サヨナラどーだ!
「粉もんとビールをしばきなさい」と言われたのでそうした
大阪府中央区/竹田聡一郎撮影
(“チェキ” instax mini 8)
竹田大阪に行ってましたー。
椎名関西の3バカには会った?
竹田“さんぼんがわ”こと川野みっちゃんは痛風で膝から下が痺れながらもプレーン酎ハイをガブ飲みし、“ヤブラシ”ことヤブ社長は細い目を開いて仮想通貨について熱く語り、“ショカツ”こと庄野は話題に関係なくいきなり踊り出して店の人に注意されてました。
椎名うむ。元気ってことだな。
竹田痛風が元気かどうかは別として、そうですね。いつも通りではありました。みんな隊長に会いたがってましたよ。
椎名しばらく会ってないもんな。雑魚釣り隊の最後の旅は去年?
竹田昨秋っすね。八丈島。最終巻が小学館から出るんですよね?
椎名『サヨナラどーだ!の雑魚釣り隊』というタイトルになった。
竹田「どーだ!」と言われても。
椎名うむ。困るだろう。著者もよく分かっていない。
竹田ケンタローに目次だけ見せてもらったんですけれど、あっちゃこっちゃ行ってますね。
椎名うむ。著者も驚き呆れた。
竹田帝国ホテルからはじまって八丈島まで。最終巻だけでも三河、紀伊半島、外房、宮古島、相模湾、伊豆大島、土佐、名護。コロナの間隙を縫って瀬戸内、石狩湾、そしてファイナルの八丈島。いやー遊んだ遊んだ。
椎名楽しかったよな。
竹田(68杯目)の「さらば、怪しい雑魚釣り隊(前編)」でも触れましたが、隊の結成が2005年9月。19年もの間、テント担いで竿下げて。
椎名海に向かってブン投げりゃ、だな。
竹田そんな雑魚釣り隊の歌なんかも作ってしまった。
椎名とても楽観的でアホっぽくて良い歌です。ザコは多才だよなあ。
竹田そのザコことシェフ・小迫剛が主役の回もありますね。
椎名うん、東ケト会の頃から炊事班長は要職なんだ。彼にはつくづく感謝している。最近、みんな元気なの?
竹田そうですねえ。みんな釣りしたり酒飲んだり、時々、キャンプしたりそれぞれ活動はしているんですけれど……。
椎名けれど?
竹田あんまり感傷的になるのも恥ずかしいけれど、ちょっと寂しいんですよ。
椎名なんで?
竹田だって、19年間、ほぼ月イチでキャンプ、あるいは釣行に出ていたわけで、それがぽっかりとなくなって虚無感が。雑魚釣りロス。
椎名いいペースで遊んでたからな。仕事がひと段落したくらいでコンちゃんやケンタローが「隊長、今月はアジの宴です」とか「九州で面白い釣りができるという噂を聞きました」とか、いいタイミングで魅力的な連絡をくれるんだ。
竹田遠征は数ヶ月前から決まっていることも多いんですが、その時点では先の予定なんて立っていなくて、参加できるかどうかは分からない。でも行けばうまい魚で最高の宴会が保証されているから、えいやって気合いれて後のことは考えずに航空券を予約して、そのスケジュールを死守するために仕事を終わらせる。その繰り返しでした。
椎名仕事が理由で遊びに行けないってカッコ悪いしな。
竹田そうなんです。僕なんかはパソコン1台あれば仕事になっちゃうから、雑魚釣り旅に仕事を持ち込むこともたまにあったんですけれど、「お前、仕事なんかしてるのか」とバカにされるし、出遅れるとご馳走は既になくなっていることもある。
椎名ははは。
竹田あともうひとつ副作用というのかな、雑魚釣り隊の弊害があって。
椎名なんだい?
竹田刺身や寿司をはじめとした鮮魚、これを下手に外で食えなくなってしまっています。
椎名なるほど。鮮度が落ちたスカスカのアジフライとか、水っぽいイカとか、店で出てくると食べる気にならない。
竹田そうなんです。量も同様で、1380円のカツオのたたきを頼むと、5切れくらいがちんまり出てくる。ため息でますね。
椎名我々は常に大皿でどーん、の宴会だったからな。5切れだったら暴動が起こる。
竹田贅沢なことしてたんだな、と今になってしみじみ振り返ってます。
椎名でもまあ、取材はないけれど、みんなで飲んでるじゃないか。
竹田そうですね。彼らとは今でも釣り仲間、飲み仲間、麻雀仲間、キャンプ仲間ですし。
椎名麻雀ではテキとも言う。
竹田確かに。最後に隊長として19年を振り返ってもらっていいですか?
椎名そういうの苦手なんだよ。
竹田えー、ビシっとシメてほしいな。あ、じゃあ、10月14日のクロステラス盛岡のイベントで話をしてください。椎名隊長最後の訓示。
椎名考えておく。本はいつ発売?
竹田9月29日ですが、都内の大型書店などでは今週半ばから並ぶようです。
椎名走って買いに行くよーに。
竹田歩いてでもいいので、よろしくお願いします。盛岡でお会いできる方もいるのかな? みんなで乾杯できるといいですね。
椎名冷麺にまぐろをのせて食べよう。
竹田その狂気も19年間、ブレなかったっすね。感服です。
椎名誠:東京都世田谷区生まれ、幕張の海っぺり育ち。原稿を書きながらビールを飲む作家。好きな酒場は新宿「犀門」と新宿三丁目「池林房」。
竹田聡一郎:神奈川県秦野市生まれ、相模川沿いの芝生育ち。ビールを飲みながら原稿を書くライター。好きな酒場は新宿三丁目「西尾さん」と幡ヶ谷「駅」。