100杯目:酒は百薬の長

100杯目

シーサーも「100回おめでとう」とお祝いしてくれた
沖縄県那覇市/竹田聡一郎撮影
(“チェキ” instax mini 8)

竹田おめでとうございます。ありがとうございます。

椎名どうした? 頭蓋骨オープンリーチか?

竹田この「最近のシーナ」が100回に到達しました。

椎名あー、そうなのかー。

竹田見てないんすか?

椎名インターネット使えないからな。

竹田ガラパゴス作家!

椎名ん? どういう意味?

竹田えー、孤高の進化を遂げたすごい人、という意味です。

椎名ふーん。

竹田たいして売れてないモノカキの僕としては、連載100回というのは感無量なのです。椎名さんは「週刊文春」で足掛け23年全1126回の「風まかせ赤マント」を連載していましたので、そこと比べるには及びませんが。

椎名そんなやってたっけ?

竹田最終巻が『さらば新宿赤マント』(文藝春秋)のシリーズ全24巻です。長寿エッセイでしたね。

椎名そうかー。実感としては毎週、締め切りがあって、それにつかまらないように書いていただけとも言える。

竹田なるほど。イチローさんが2004年にメジャーでシーズン最多安打を達成した際に「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行くただ一つの道」とおっしゃっていましたが、それに通じるものがある。

椎名いや、そうでもない。でも野球で例えるなら昔、東海林さだおさんに「週刊エッセイは3割バッターでいいんだ」と言われたことがあった。

竹田東海林さんが週刊朝日に寄せている「丸かじりシリーズ」も、この夏に朝日新聞出版から出た『丼めしの丸かじり』で46冊目ですって。

椎名それはすごいねえ。東海林さんから「毎回、面白いことなんて書けない。3回に一度、面白ければいいと思う」と聞いて「なるほど」と気持ちがラクになった。

竹田この「最近のシーナ」も3割打てていればいいんですが。

椎名だからといって安易にウケ狙いに走るのもなあ。

竹田そうなんです。あくまで日々のよもやまばなし。だから酒と旅の話が多い。

椎名うーむ。

竹田なんか不服そうですね。

椎名酒の話だらけでバカみたいなんだ。

竹田読書百遍義自ら見るという言葉もありますので、読み返してみたのですが。

椎名うん。

竹田やっぱりバカみたいでした。

椎名そうだろう。

竹田しかし椎名さん、責の半分はそちらにもあるのでしょう?

椎名いや、私はもっとブンガク的な話がしたい。

竹田以前、「もっと他の話をしよう、アインシュタインの相対性理論とかさ」とおっしゃっていましたが、じゃあその話しましょう。

椎名お、いいね。そもそも相対性理論というのは略されていて、正確には一般相対性理論の中に特殊相対性理論があるんだ。

竹田まさか、本当にはじめるとは。そうなんですね。勉強になります。そして?

椎名……まだ残暑も厳しいな。ビールでも飲むか。たまにはラガーだな。

竹田唐突に話を変えた。さては……。

椎名あと自分で調べなさい。まあ難しい話は抜きにしてビールだビール。

竹田シーナ百まで飲み忘れず。

椎名酒は百薬の長。

竹田ともかく、この「最近のシーナ」も「百害あって一利なし」と言われないように200回、300回を目指しましょう。

椎名引き続きよろしくお願いします。乾杯。

椎名誠:東京都世田谷区生まれ、幕張の海っぺり育ち。原稿を書きながらビールを飲む作家。好きな酒場は新宿「犀門」と新宿三丁目「池林房」。

竹田聡一郎:神奈川県秦野市生まれ、相模川沿いの芝生育ち。ビールを飲みながら原稿を書くライター。好きな酒場は新宿三丁目「西尾さん」と幡ヶ谷「駅」。

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