96杯目:マグロ鮪ツナまぐろ
最近はトロより赤身が好きだ
静岡県沼津市/椎名誠撮影(ニコンDf)
竹田お、うまそうですね。
椎名マグロ食いたい。中トロ食わせろ。
竹田ほぼ禁断症状。
椎名マグロのためならなんでもやる。
竹田末期的ですな。
椎名だって夏じゃないか。
竹田椎名さんはオールシーズンで鮪ツナまぐろツナ……って唱えてますよ。
椎名雑魚釣り隊の連中は出撃しないのか?
竹田ここの10杯目「マグロカツオ二股疑惑」ではコンちゃんが届けてくれましたね。
椎名あれはうまかった。彼は素晴らしいヒトだよ。もっとくれないかな。
竹田コンちゃんはなんだか忙しいみたいで、この夏はマグロと勝負していないようです。
椎名「男なら海に出ろ。モリを構えよ」と伝えてくれ。
竹田自分で電話してください。それとモリは構えないと思います。
椎名海仁は?
竹田ヤツは最近、久里浜でタチウオを釣ったそうです。ザコは浦賀水道でアジ、ケンタロウは剣崎でイサキ、ベンゴシは八景島でタコ、岡山に移住したジグマン岡本は鳥取でイカ、会社を立ち上げて忙しい太陽は市ヶ谷でコイ。みんな独自路線です。マグロの報告は上がってきてないですね。
椎名ううむ、大物を狙う気概のある男はいないの?
竹田タチウオやイカでも十分、大物と言えます。そもそもが「わしらは怪しい雑魚釣り隊」ですから。
椎名わしは卑しいマグロ食べたい。
竹田うまく韻を踏んでもダメです。自分で行けばいいのに。『南島ぶちくん騒動 』(幻冬舎文庫)ではマグロを求めてうろついてましたぜ。この本、お洒落な装丁だなーと思ったら、もともとマガジンハウスから『南島だより』というタイトルで、写文集として出したんですね。
椎名そうだっけ。
竹田そうです。年季の入ったマグロ愛ですなあ。
椎名みんなで4時間くらい船に乗って釣りにいったのはどこの島だっけ。
竹田久米島です。『わしらは怪しい雑魚釣り隊 エピソードⅢ マグロなんかが釣れちゃった篇』(マガジン・マガジン)ですね。のちに新潮文庫になる際の解説で、コンちゃんがやはりマグロに狂った隊長の奇行に触れています。くわばらくわばら。
椎名久米島は天野が船に乗った時?
竹田そうです。彼は吐瀉するために海面と向き合ったのちあとは船室で転がってました。あいつがいちばんマグロっぽかった。
椎名ははは。思い出した。楽しかったね。
竹田あの時、僕も辛かったんですけれど、椎名さんが大揺れの中、甲板で半裸状態で「弁当くれー」って弁当食ってビール飲んでて。「辛い時は日光を浴びてなんか食ったほうがいいんだ」と言うから真似したら僕も吐いた。
椎名釣るのは大変だけど、また南の島にマグロを食べに行くのはいいなあ。
竹田この前、宮古島で食べてませんでしたっけ。
椎名ああ、そうそう。港のところで。あれはいい時間だった。そういや最近、大間のマグロってあんまり聞かないね。
竹田時事通信の記事によりますと、水産業者と漁業者が結託して漁獲を報告しなかったとかでケチがついたのかな。ブランド的にはずーっとトップという感じでもなくなっているかもしれませんね。
椎名ふーん、うまければどこでもいいけど。名前ばかり先走って、味よりブランドを求めるのはバカみたいだよな。
竹田御意。でもブランドが確立すれば儲かるんでしょうね。
椎名鮪の鯱回し。
竹田まさにそれだ。しかし、漁夫の利なんて言葉もあるけれど、昔から漁業は金を産む産業だったんですね、きっと。
椎名そうだね。だから大切に食べたい。今夜食べたい。
竹田待てば海路の日和あり。雑魚釣り隊の選良たちに連絡しておきます。
椎名頼む。我にマグロを。
椎名誠:バカ酒旅作家。黒ビールとレバーでこの夏は乗り切りたい。ネギマもいいヤツだ。せせりとつくねも外せない。
竹田聡一郎:漂流フリー麦酒ライター。骨折のせいで生ビールのジョッキをうまく持てないので、この夏は瓶ビールで攻めたい。